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「大人の階段」 ‐パ・ド・ドゥ‐

こんにちは、高橋です。
長かったリレー小説企画もこれにて完結です。完結させました。それでは、どうぞ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

僅かなカーテンの隙間から射す陽の光が、テーブル上のタバコの空き箱を照らしている。カチッ、カチッと掛け時計の秒針の音だけが、冷え切った室内に響いている。
……部屋だ。いつもと変わらない自分の部屋だ。

慌ててiPhoneを手にしてホームボタンを押す。

「09:03 12月20日 日曜日」


よかった、日曜日だ……。仕事は休みだ。


…あれ、でもこれは一体どういうことなんだ?
たしか昨晩はタバコを買うために部屋を出て、変な行列に並んだら、懐かしの大槻先生に逢ったりして。その後、階段から落ちて、何か地蔵みたいなものと話をしたような………。


その辺りからのはっきりした記憶がない。気がついたら自分の部屋で寝ていた。
でも、ちゃんとパジャマに着がえているし、特に部屋が荒らされた形跡もない。


「何も変わってないよね……?」

ふと、この世界に自分だけしかいないような気がして、とりあえずテレビをつけてみるが、休日のこの時間にニュースはしていない。コーヒーを淹れ、菓子パンを頬張りながらチャンネルを変えると、『題名のない音楽会』が、クリスマスソング特集をしていて、オーケストラがチャイコフスキーのくるみ割り人形を演奏している。それを聴いているうちに段々昨晩の記憶が蘇ってきた。

あっ!…そうだ、私、おミヤさまとかいう変なやつに会ったんだ。
そして「1人でクリスマスを過ごしたくない」とかお願いしたんだった。
でも、一体どういうこと…?あれは夢ではないよね……?

ダラダラと昨晩の事を考えてはみるものの、中々思い出すことができない。それでも色々と気になって仕方がなかった典子は、丁度お昼を過ぎた頃、昨日の場所に行ってみることにした。



簡単に身支度を済ませて外に出ると、雲ひとつない青空が広がっていた。人通りが多いとも少ないとも言えないような休日の駅前を足早に歩く。街路樹にはイルミネーションの装飾が施してあるが、まだ電気がついていないから、なんだかみっともない。

たしか、この建物だったような……。
まじまじとそのビルを見つめてみるが、特に変わった様子はない。すぐ近くに外から地下へと続く階段があったから降りてみるが、居酒屋しかないようだ。この時間はまだ営業していない。

地上に戻り、ビルの周りをウロウロしていると後ろから突然声をかけられた。


「あれ、お前は、たしか……矢吹じゃないか??」

昨日逢ったばかりの大槻先生だ。黒いダウンジャケットにショルダーバッグをかけている。

「あっ、先生、昨日はどうも……」


「えっ、昨日?昨日が何かしたのか?それにしても久しぶりだなぁ!元気にしてたか?」


「あれ、、、!?……えっ、 覚えてない!?!?」


「10年ぶりくらいか? しかしまぁ、お前も変わってないなぁ。」

その後、ここで逢ったのも何かの縁だという事で、2人は街をぶらつくことになった。典子は全く事態を把握できていなかったが、とりあえず先生についていくことにした。


「先生は、ご結婚されたんでしたよね?こんな休日の昼間に1人で何してるんですか?」


「ん? 何言ってるんだお前。誰かと勘違いしてるんじゃないか? 俺は今でも独り身だよ。今日は天気もいいし、まんだらけにでも行こうかと思ってな。」


「だって市川先生と……」


「えっ…市川先生?英語の先生のか?綺麗な人だったよな~アハハ。今頃どこかで幸せに暮らしているんじゃないかな~。」

先生は少し動揺したような様子を見せたが、2人は全く会話が噛み合わないまま、ブロードウェイに辿り着いた。そういえば、かれこれ数年間中野に住んではいるけれど、全然来たことがなかったな。そんな事を思いつつ、エスカレーターで漫画売り場へと向かった。


「先生って漫画とか好きだったんですね。意外です。私は殆ど読まないので……。」


「へぇ、そうなんだ。俺は昔からずっと好きだぜ?それに高校生を相手に仕事をしているわけだから、奴らと共通の話題を持っておきたいしな。」

店内中に埋め尽くされた漫画を見て、改めてこの国にはどれだけ漫画があるんだよ、と思った。




「あ、この漫画とか結構オススメだぞ。俺は持ってるんだけど、せっかくだしプレゼントしてやるよ。読んでみるといいよ。」

そう言って、先生は手に取った漫画をカゴに入れた。その後も先生は、何やら見たことも聞いたこともないような漫画を10冊近く選び、会計を済ませた。





2人でブロードウェイの2階を歩いていると、ふと小物屋で売られていた10cmほどの地蔵の置物が目についた。

「ん?どうした?その置物でも気に入ったのか?お前、変わった趣味しているんだな(笑)。」


「いや、そういう訳ではないのですが……何だか気になって……」

結局、典子はその置物を購入した。勿論、部屋に飾りたいというわけではなく、殆ど本能的に買わなければいけないと思ったのだ。
なぜなら、昨晩会ったおミヤさまにどことなく似ている気がしたからだ。



「そういえば、お前腹減ってないか?すぐ近くでお昼を食べようと思っててさ。」

2人はブロードウェイを後にして、路地にあるカフェへと向かった。





…ってこれはメイドカフェ??どうやら先生はここの常連みたいだが、私はこんな店に来るのは初めてだ。とりあえずこの店のオススメらしいお嬢様ランチプレートを注文する。先に出されたドリンクを飲みながら、2人はあらためてこの10年近くの間にあったことを、お互いに話をした。


典子にとっては、昨晩も同じ話をしたばかりだったが、先生の話は昨晩行列に並んでいた時のものとは全く別物だった。実は、先生はあの市川先生と一時は付き合っていたらしいが、その後別れて以来誰とも交際していないらしい。そして、どうやら本当に現在も独身のままみたいだ。

…昨日の先生は一体……。


いかにもレンチンしたようなランチプレートが運ばれてくると、話題は現在のお互いの趣味の話へと移った。先生は、いわゆるかなりの“オタク”で漫画やアニメなどに熱中しているらしかった。この種の人間は、自分が好きな事の話になると止まらなくなる。どことなく知識をひけらかすようでもあり、同時に批判的である口ぶりが、話の内容はよく分からずとも聞いていて気分が悪い。そして、周りのメイドさん達にタメ語で話しかけている姿もなんだか痛々しい。さすがにうんざりしてきた。

先生ってこんな人だったっけ……。別に、先生に恋心なんてものはないけれど、少しショックだった。たしかに高校時代にちょっと格好良いかもと思ったこともあった気がするけれど、単に高校生の自分には先生が少し大人に見えたからだけかもしれない。


店を出た後、一応連絡先を交換し、その日はそのまま帰ることになった。先生は、この後地下アイドルのライブに行くらしい。






帰宅後、先程先生からプレゼントされた漫画をパラパラとめくってみる。

「何この漫画…何で主人公だけ鳥みたいな姿をしているの…?これのどこが面白いの…?意味がわからない…。」

すると、早速、先生からLINEが送られてきた。


「今日はありがとう。久々に会えて嬉しかったし、とっても楽しかったよ(^O^)
もしよかったら今度また食事でも行かない?いきなりだけど今週の夜とかどうかな?
因みに俺は、24日とか空いてるんけど(笑)」





……気持ち悪い。いきなり誘いすぎだし、「(笑)」ってなんだよ「(笑)」って。
とりあえず既読無視することにした。





「こっちの世界はどうや?」

すると突然、鞄の中から声が聞こえた。さっき買った地蔵がしゃべりだしたのだ。

「やっぱりアナタだったのね?これは一体どういうことなのよ!?」


「よう見つけたなーとびっくりしたわ。俺はただ近くで見守ってるつもりだったんやけど。えーっと、これは簡単に言うと並行世界みたいなもんや。この宇宙はな、無数の可能性で分岐した世界が繋がって出来ているんや。せやからあなたを先生が結婚していないルートに移動させてやったんや。」


「じゃあ、私と先生で一緒にクリスマスを過ごせというの?」


「そうやな。たった今LINEも来てたやん。」


「そんなの嫌よっ……。別に私は先生の事が好きだったわけではないし、それに今日久々に話をしたけれど、私オタクは生理的に無理っ。一緒に居てもつまらないもの。それにいきなりメイドカフェに連れて行くなんて非常識過ぎるわ!」


「まぁまぁ怒るなって。なんやねん、さっきのお誘いをOKすればクリスマスを1人で過ごさなくてええのに。」


「ムリなものはムリなの!!とにかく元いた世界に戻してよ!こんな下心丸出しのLINEがいきなり来るなんて、どうせ私が誘いを断っても何度も連絡してくるに違いないわっ!そんな生活嫌よっ!」


「全くしょうがないなあ。今回は特別やで。あなたを元いた世界に戻したるわ。でもあれやで、言っとくけど時空を並行に移動するだけやから、昨日には戻れんで。今日この瞬間の、元いた世界のあなたに戻るだけや。」


「そんなの構わないわっ!あっ、でもひとつ教えて。昨晩あなたと会った世界は元の世界のルートだったの?」


「いや、あの場所は既にどのルートにも属さない、ニュートラルな時空間や。せやからアナタが俺にあった記憶はなくなる。そうやなぁ、少なくとも階段を降りてるあたりまでは、元のあなたがいたルート世界のままだったはずや。」


「なるほどね。まぁ問題ないわ。元の世界の日曜日の私なんて、どうせ今頃部屋で映画でも見て過ごしているはずだもの。」


「はいは~い、ほなっ時間もないのでいくで~。ちちんぷいぷいほーい!」

おミヤさまが再びふざけた呪文を唱えると、典子の意識が遠くなっていった………。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
………話は遡り、12月20日 日曜日、午前7時30分………


「パパ~、起きて~朝だよ~」

自分の布団に勢いよく飛び乗ってきた3歳になる息子の重さに成長を感じつつ、今日も一日が始まった。リビングの方からは、トントンと、包丁がまな板を叩く音が聞こえる。

高校教師をしている俺は、同じく教師をしている2歳下の美結と5年前に結婚した。今年で3歳になる息子の直人は、今日も元気でいっぱいだ。とりわけ贅沢な暮らしをしているわけではないけれど、特に生活に困っているわけでもない。将来の事を考えて、そろそろマイホームでも欲しいなとぼんやりと考えていたところだ。

あれ?昨晩誰かにこんな話をしたような……。
気のせいかな、きっと変な夢でもみたのだろう。

最近は、受験前の冬期講習やら進路相談やらで土曜日も出勤することが多かったから、今日くらいは思いっきり家族サービスしてやりたい。たしか、お台場で開催されている妖怪ウォッチのクリスマスイベントに直人が行きたがっていたはずだ。それに、そろそろクリスマスプレゼントを用意してやらないとな。


寝室を出て、リビングのソファにゆったりと腰をかけ、美結が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、ふとテレビに目をやるとニュース番組が流れていた。

「……続いてのニュースです。昨夜、東京都中野区中野3丁目の雑居ビルの地下2階の階段下で、女性が倒れているのをこのビルの清掃員が発見し、119番通報しました。女性は駆けつけた救急隊により、直ちに病院に搬送されましたが、2時間後に死亡が確認されました。女性は30歳前後と見られ、遺体に目立った外傷はなく、死因は脳挫傷と見られています。警察は身元の確認を急ぐともに、事件と事故の両方で捜査を進めています。………」


(完)



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
はい、長くなりました。めちゃくちゃ疲れました。もう二度とこんなことしたくありません。
みんなで話し合って協力してストーリーを作り上げたグループもあったようですが、僕たちのグループは全く話合うことなく、全員が出たとこ勝負だったので大変だったと思います。

僕に順番がまわってきた時、本当に残り1話で終われるのか?大槻先生を登場させなければ、何のために出てきたのか分からないし、かといっていきなり新キャラを出すのも変だし…と悪戦苦闘した結果このようになりました。

並行世界云々は、ノリで書いたので、詳しくはツッコまないでください。あまりSF脳でないので。


さて、来週からは、いよいよ5期生の卒論日記が始まります!!
トップバッターはゼミ長の荒井くんです!
僕は、このブログを書くために、卒論に使える貴重な一日を潰してしまって泣きそうです。

それではまた、よろしくお願いします。


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「大人の階段」−転がり落ちた先には−

こんにちは!小知和です。
さて、このリレー小説ももう最終話の第4回、ゴールも目前です!
では早速。

---

「おあしもとにきをつけてくださいね!」

女の子に促されるままにやたらとポップな看板の向こう側へと足を踏み入れると、大人ひとりがやっと通れるくらいの階段が姿を現した。壁から天井までどギツいピンクで塗られているけど、ところどころペンキが剥がれて白い部分が剥き出しになっている。下の方を覗いてみても、暗くてよく見えなかった。電気のひとつもないみたいだ。

流れに身を任せてここまで来てしまったけれど、“大人の階段”なんて、どう考えても怪しいよなぁ…。階段を降りる直前ですこし立ちすくむ。その時の私の中には、先に先生が入っているという安心感と、怖いもの見たさの好奇心が半分ずつあった。もしかしたら、後者の方が大きかったかもしれない。

「よし。」

階段は狭く薄暗くて足元がよく見えないので、目を凝らしてゆっくりと降りていった。

しばらく降りていくとぼわっとした光が現れた。近づいてみると、そこにはカウンターがあって、先程のおかっぱ頭の女の子と瓜二つの、これまたおかっぱ頭に和装の小さな女の子が立っていた。双子なのかな…?それにしても、その姿は壁のピンクにはどう見ても不釣り合いだ。ここのオーナーの趣味なのだろうか。そもそもここはお店なのか、何なのか…。

「ようこそ、“大人の階段”へ!おまちしておりました!」

「あれ、もしかして、今私が降りてきたのが“大人の階段”?と、すると…あなたが“おミヤさま”…?」

「むむ、ちがいますよー。ここは“大人の階段”へのいりぐちで、わたしはただの あんないにん です。おねえさんにはこれからもういちど、かいだんをくだって、“おミヤさま”にあってもらいます!でも、そのまえに、この“しょーだくしょ”にサインしてくださいね!」

「しょ、しょーだくしょ…?」

差し出された紙にはこう書いてあった。


しょーだくしょ

 ぼく・わたしはなにがあってもおこりません

ねん がつ にち
なまえ:            



…なんてふざけた「承諾書」なんだ。「僕・私は何があっても怒りません」…平仮名ばかりで読みづらいけど、きっとこうだろう。

「“おミヤさま”は、おねえさんを、おねえさんのゆめにみちびいてくれたり…みちびいてくれなかったりします。」

「…え、ええ?!どういうこと?!」

そんなバカな。怒りませんって言ったって、誰に対して怒るって言うんだ。だいたいこんな怪しい場所で、こんな適当な“しょーだくしょ”、こんな適当なシステム…一体、誰のイタズラなんだろうか。先生は、この“しょーだくしょ”にサインしたのかな。してなかったら、きっと出てきて、すれ違っているはずだ。せっかく降りたこの階段をもう一度上って帰るのもめんどくさいし、さっさと進んで先生に会って、ワケがわからないこの状況を共有したい。私は、少し投げやりになりながら女の子が差し出したペンを受け取って、「しょーだくしょ」にサインをした。

「ありがとうございます!では、おまたせいたしました。”大人の階段”はこちらです。」

女の子は私をカウンターの向こう側に案内すると、カーテンの前に私を立たせた。女の子がカーテンを勢いよく開けると、そこにはさらに地下へと下る階段が続いていた。ま、まだ階段か…

「さあ、いってらっしゃい!」

その瞬間。

ドンッ

「あーあ、あしもとにきをつけてって、いったのに…。」




女の子の声が遠くに聞こえた。一体何が起こったんだ。階段の前に立ったところで急に強い力で背中を押されて、私は階段を転がり落ちてしまっている。なぜだかうまく止まれない。それどころかスピードは増すばかりだ。すでに複雑骨折していてもおかしくないくらいだけど、不思議と体は痛くない。しかし、どこまで転がっていくんだろう。帰りはエレベーターがあるのかなぁ、最近は階段の上り下りがつらいんだよなぁ。先生と出会った13年前、高校生の頃はそんなこと思わなかったのに。そういえば、先生が奥さんと結婚したのが30歳だって聞いた。私も、高校生の頃は友達と一緒に28までには子供欲しい!なんて語り合ってたっけ…


「“おミヤさま”は、みなさんのゆめにみちびいてくれるんですよ!」


最初に会った女の子の言葉を思い出した。真っ暗闇の中を転がり続けるなかで、私はだんだん“大人の階段”に、なんとなく期待を膨らませていた。もしも、もしも私の夢が叶うなら…
お願いします。おミヤさま。私に、私に素敵な彼氏を!!そして、寂しくないクリスマスを…


ゴンッ ズテンッ


そうこう考えているうちに、何かにぶつかったらしく、私はようやく止まることができた。音は派手でマヌケだったけど、やっぱり体は痛くない。真っ暗闇から急に明るいところへ出たみたいで、目がチカチカする。

目が慣れたところでぶつかった先を見上げると、そこには石で造られた人型の…いわゆる地蔵みたいなものが立っていた。少し見上げる高さなので、170cmくらいはありそうだ。短髪で好青年っぽい表情をしていて、人間でいうと20代…いや、30代くらいだろうか。それにしても上から「ニューシャネル」と書かれたTシャツが着せてあるなんて、サブカルっぽい雰囲気の地蔵だなぁ。これもオーナーの趣味だろうか…。

「誰がサブカルなん」

「えっ?!わっ、しゃべった?!」

び…びっくりした。急に目の前のサブカル地蔵がしゃべりだすなんて。その口の動きのなめらかさはとても石造とは思えなかった。っていうか、あれ、私さっきサブカルっぽいって口に出してたっけ?

「地蔵やないって。おミヤさま。おミヤさまは神様なので、あなたの考えてることはせーんぶ分かるんですよ。」

ええっこれがおミヤさま?なんだか想像と違う…!神様とか言って、やたらとフランクだし。関西弁だし。地蔵だし。

「だから地蔵やないって…ま、いいや。えーっと…矢吹…典子サン?あ、さっき来た人の元教え子なんやねー。」

「あっ…先生は、大槻先生はどこにいるんですか?」

「大槻サンはね、もう夢に導いたから。ここには居らんけど、ま、矢吹サンも、これから夢に導くんで。早速やけど矢吹さんの夢って何なん?」

ごくん、と私は唾を飲み込んだ。地蔵とはいえ、初対面の人…いや地蔵に、彼氏が欲しいと頼むなんて、なんだか傲慢で恥ずかしいけれど。これが本当なら、5日後には、3年越しのハッピーメリークリスマスだ!もう一人でバラエティ番組を見ながら過ごすことも、イルミネーションを観に行くことも…クリスマスの前後しばらく、友達がSNSにあげる彼氏の存在をにおわせる写真を見て落ち込むこともなくなるんだ。地蔵相手に恥ずかしいなんて言ってる場合じゃない!

「私…か、彼氏がほしいです!」



「ぷっ」

「え、ええっ」

この地蔵、今噴き出したでしょ。人が恥を忍んでお願いしたのに!まったく、バカにしてんのか。

「いやー、ごめんごめん。ここに来るまでにさ、あの長い列見たやろ。だいたいさ、ここにくるのは20〜40代くらいの比較的若い人たちなわけですよ。その5割か6割くらいが恋人が欲しいって言うんよね。みんな真剣な顔してさ、こんな石像相手に。クリスマス前だからってみんな焦りすぎとちゃう?って気もするんですけどね。ま、いいや。矢吹サンはさ、今まで散々失敗してるみたいやん?ぷぷぷ。」

な、なんだこいつ!あんな長い列に並んで、意味がわからない承諾書にサインまでして、恥を忍んでこんな失礼なサブカル地蔵に彼氏が欲しいなんて…期待した私がバカだった!

「ちょっとアンタ、さっきから黙って聞いてれば…!」

「はいはいはい。さっき“しょーだくしょ”に怒らないってサインしたやん?」

「そ、それは…………。」

たしかに、今までの彼氏は散々だった。散々だったけど…

「とにかく、クリスマスくらいは一人で過ごしたくないのよ。」

「ふーん。じゃ、後ろも詰まってるんで、そろそろ夢に導くとしますー。お疲れ様でしたー。ちちんぷいぷいほーい」

“おミヤさま”がふざけた呪文を唱えると、景色がだんだんぼやけて“おミヤさま”も見えなくなってしまった。意識も遠くなっていき、気がついた時には…

「あれ…ここは?」


---

ここで、アンカーの高橋君にバトンタッチです!
果たして、典子の夢は叶うんでしょうか?
最後までよろしくお願いします!

「大人の階段」−偶然の再開、そして、“おミヤさま”−

「お、お前!こんなところで何やってんだよ」


懐かしい声に振り返ると見覚えのある男性の姿があった。

……高校時代の恩師である大槻先生だ!


「え!?大槻先生!?」


高校を卒業して十数年も経っているものだから(その事実にも目を背けたくなるけど…)
当時の新任で若々しかった先生の姿と比べると、少し「オジサン」になっているようだけど、間違いない。
大槻先生だ!

「おう!矢吹じゃないか!!久しぶりだな!」

大槻先生は私が高校一年生の時にちょうど新任の社会科の教師として赴任し、私のクラスの副担任をしていた。
当時の先生は大学を卒業して間もない新任教師だったから、クラスのコたちの間でも若くてイケメンと評判だったっけ。
初めて先生の世界史の授業を受けたのは高二の時。
歴史の授業は日本史と世界史の二択で、世界史を選択したものの、カタカナの人名ばかりで苦手だった。

そんな私の世界史に対する意識を変えたのが先生だった。

いや、私だけじゃなく、あの時きっと多くの生徒たちに影響を与えていたと思う。

おじさんおばさん先生が大半のうちの高校の教師の中では一番私達と歳が近いのもあって、
わかりづらい用語を馴染みやすい例に例えて説明していく授業はとても面白くて、
まるでテレビでバラエティを見ているかのように時間が過ぎていったものだ。

「あんまり大きな声で言えないけど、このスターリンの肖像画、現代文の渡辺先生に似てないかー?」

と、大きな声で言って大爆笑を誘っていたのは忘れもしない。(しかも、隣の教室は渡辺先生の現代文の授業)



…なんてことを思い出しながら懐かしさに浸っている場合じゃなくて!

こんな大行列の、しかも列の中にいるってことは……

「あの…先生も“大人の階段”ってやつに並んでるんですか?」

他に並んでる人たちはみんながみんな、面白いくらい静かで、聞いても答えてくれそうにない。
偶然とはいえ、せっかく知り合いに出会ったのだから聞いてみよう、そう思った。

「んー…まあ…そうらしいな。俺もよくわからないんだけど。嫁と息子のためにあっちの不二家でクリスマスケーキを予約してきたとこなんだけどさ」
「ああ!そっか!先生ご結婚されたんですもんね!」

そこからまた話は逸れ、先生の奥さんになった英語の市川先生は今も子育てしながら教師続けてるってことや、
息子さんがもう3歳になること、そして私は大学を卒業して、忙しいけれどなんとか広告の仕事を毎日やっている、
…といったような世間話をした。


「…そういえばさ、お前の夢って、なんだ?」
「え…夢ですか?」


そういえば、さっき最初に話しかけた無愛想な男性も言っていた。

『“大人の階段”には夢がある。とにかく夢があるんだ。』
…と。

「私の夢…夢っていうか直近の願望としては、やっぱり彼氏ですかね!できればクリスマスまでに…ってどう考えてもムリですけど!あははは…」

……って言ってて自分で悲しくなってきた。しかも先生相手に何言ってんだ。

「なるほどな、彼氏いないのか〜。お前ももう…いくつだ?アラサーってやつか!?」
「もうっ!やめてくださいよ〜、その現実は直視したくないんですぅ〜!」
「スマンスマン!嫁入り前の女性にそんなこと言うもんじゃなかったなー!」

ハッハッハ!!と高らかに笑ってるけど、私はちょっと傷ついたぞ、先生。
べつにずっといなかったわけじゃないし、ただ、ちょっとダメな奴ばっかり引き当てちゃうだけだし!

「いいですよね〜先生は帰ったら奥さんもお子さんもいるし、クリスマスだって楽しく過ごせそうですしー!そういう先生の夢はなんなんですか〜!?」
と、思わずムキになって聞き返した。

「うーん、俺は…嫁と息子とこれからも健康に暮らせれば何も…まあ強いて言えば、マイホーム買いたいってとこかな。」

うっ。ムキになって聞いたのがいけなかった。クリスマスまでに彼氏!とか言っちゃった自分が恥ずかしい…
「さすが、家庭を持つ男の人の夢は素敵ですね…」



そんな風に話し込んでいると、いつの間にか列も前に進んでいたらしい。
やっと先頭が見えてきた。
けど、列の先にはとても『夢』とはかけ離れていそうな古い雑居ビルしか見えない。

「や〜っと見えてきたな。」
と、先生がボソリ。

「えぇっ、先生は知ってたんですか!?」
「いや、並ぶ前に先頭に何があるかだけ確認してきたんだ。」
「じゃあ、あれが“大人の階段”…!?」
「どうやら、そうらしいなあ……」


不思議そうに“大人の階段”とやらがあるらしいビルを眺めていると、

「おねえさん、おねえさん」

幼稚園…いや、小学1年生くらいだろうか。
七五三で着るような和服を身に纏い、日本人形のようなおかっぱ頭の小さな女の子が私の手を引っ張った。

「チケットはもってますか?」
「チケット?」
チケットなんてあったのか…
というか、そもそも私は先生を見つけて話し込んでついてきてしまっただけで、ここに並んでいたわけではない。
女の子は黒目がちの大きな目で私の目をじーっと見つめている。

「あの、私」
「うん!だいじょうぶです!わたしが“おミヤさま”におねがいしてきますから!」

“大人の階段”に並んでいたわけではないの、と言おうとしたのを遮られてしまった。
女の子は今度は先生の方にぴょんぴょんと回り、
「おじさんはチケットありますか?」
と尋ねた。

「お、おう、あるよ!」
先生は『おじさん』と言われたのがちょっとショックだったのか、
渋い顔をしながらチケットらしいものを女の子に渡した。

「それじゃ、“おミヤさま”におねえさんをあんないしてもいいか、きいてきますから、ちょっとまっててくださいね!」

と、言うと彼女はくるっと回り、“大人の階段”がある方へ向かおうとした。

「ちょ、ちょっと待って!私、ここにちゃんと並んでないし、“おミヤさま”って誰!?そもそも大人の階段ってなんなの!?」

子供相手に思わず問い詰めてしまった…が、すると、女の子の足がピタッ、と止まった。

「“おミヤさま”は、みなさんのゆめにみちびいてくれるんですよ!
“大人の階段”は…もうすこしですから。ちょっとのしんぼうです。もうすこしまっててくださいね!」

…曇りない笑顔でそう言うと、ぱたぱたと“大人の階段”の方に走っていった。
なんだか子供になだめられてるみたいで情けない…。

「まあ、おそらくあの子、“大人の階段”の案内人か何かなんだろうな。
矢吹もせっかくここまできた訳だし、見てみようよ、“大人の階段”。
あの子も上の人に口聞いてみてくれるみたいだしさ」

「え…でも…」

列は少なくとも駅前の方までは伸びていた。
そこから15分程度歩いてきて先生を見つけたのだから、
相当な数の人を抜かしてきてしまったのでは…と辺りを見渡した。

…けど、特に私のことを「割り込みやがって!」といった態度で睨んでるような人はいなさそうだった。

むしろ、ようやく“大人の階段”が近づいてきたからか、楽しみで笑みすら浮かべるような表情で、静かに待っている人ばかり。

余計に気味が悪いなあ…とか考えていると、
私と先生は、いつの間にか“大人の階段”があるという古い雑居ビルの目の前まで来ていた。

薄暗い入り口の横の壁には“大人の階段はこちらです”と書かれたカラフルなポスターが貼ってある。
先生の言うとおり、ここが“大人の階段”か…。

深い穴のようにも見える入り口からさっきの女の子が姿を現した。

「つぎのかた、どうぞ!ごあんないします」

そう言うと私達の前にいた女性の手を引き、“大人の階段”へと導いた。
「あ!そこのチケットのないおねえさん!」

私のことだ!と思いハッとした。

「は、はい!」
「“おミヤさま”のおゆるしがでたので、おねえさんも“大人の階段”、だいじょうぶです!」
そう言うと、“大人の階段”に吸い込まれるように暗闇に姿を消していった。

…ついさっきまで話が尽きなかった私達も、ついに先頭まで来てしまった緊張からか、沈黙状態が続く。


前の女性が入っていって、5分。

「つぎのかた、どうぞ!」

女の子がふたたび現れた。ついに来た。私はごくり、と息を呑んだ。
女の子は前の女性にしたのと同じように、先生の手を引いた。私もそれに続こうとする。

「あ!おねえさんすみません。“大人の階段”はひとりずつの決まりなんですよー。ちょっとまっててくださいね!!」
「ああ、そうなの、ごめんなさい…」

一応そういう決まりもあるのね。

「それじゃあ、俺は先に失礼。お前の夢、叶うといいなあ!」
先生は笑顔の裏に少し緊張した様子も交えたような表情で私の肩をポンと叩くと、女の子と一緒に暗闇に消えてしまった。

………ひとりずつ、って言っても、前の人たちが戻ってきている様子はないな。ってことは、こことは別に出口があるのかな?


…と、一人取り残されボーッと考えていると、また女の子が戻ってきた。
やはり先生の姿はない。

「おまたせしました!つぎのかた、どうぞ!」

−−−−−−−−−−−−−−
ついに、“大人の階段”の謎に近づいてきました!!!
一体どんな階段なのか、なにがあるのか私もとっても気になります…!!
そして、謎のようj…女の子、
そして、“おミヤさま”とは……!?
と、無駄に謎を増やしつつ、ここでバトンタッチです。
小知和さんよろしくお願いしまーす!

以上、大神田でした〜!

「大人の階段」-35歳教師•大槻賢史-

こんにちはー!本日の担当は石塚です。

それではさっそく!
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12月も後半になると、センター試験を控えた生徒のことで毎年頭がいっぱいになってくる。

大学を出て高校の世界史教師になって13年。担任としてクラスを持つことはないが、自分なりに熱心に指導してきたつもりだし、その甲斐あってか毎年「大槻先生のおかげで成績が伸びて志望校に合格できました!!」というありがたい言葉をたくさんもらう。

その言葉を聞くと教師は俺にとって天職だなと感じるし、毎年頑張れてしまう。

教師になって、最初の高校で出会った2つ下の英語の先生が嫁の美結だ。5年前に結婚して長男がもうすぐ3歳になる。嫁と息子に早く会いたくてほぼ毎日直帰している。だが、この時期はどうしても生徒を優先してしまい、夜まで学校に残る生徒の面倒をみたり家に帰っても生徒の成績の受験のことを考えてしまっているせいで家族サービスが十分にできず、2人に寂しい思いをさせてしまっている。

さすがにクリスマスくらいはケーキを予約して早く帰ろうと思っているがバタバタしているうちに予約できないままもう19日になってしまった。

本当はキルフェボンのケーキを予約してあいつをびっくりさせたかったけど、こんな直前じゃ予約は無理だったか、、。

予想はしていたものの、がっかりして溜め息をつきながら最寄りの中野駅に着いた。
いや、キルフェボンは無理でも不二家ならまだ予約できるはず!

時計を見ると19時26分。よし、まだ開いてる!

思い立ったように北口を出てすぐの中野サンモールにある不二家に向かった。
「いらっしゃいませ~。」

「あのぅ、、25日にクリスマスケーキを予約したいんですけど、まだ出来ますか、、?」

「はい!まだご予約承ってますよ。クリスマスケーキでしたらこちらからお選びください!」
5種類ほどケーキが載った予約専用のチラシを渡された。

「うーん、では、このブッシュドノエルでお願いします!」

「かしこまりましたー!ではこちらの予約用紙にご記入お願いします。」

「はい。」

「ご記入ありがとうございます。それではお先にお会計お願い致します。お会計3560円でございます。」

「5000円でお願いします。」

「ありがとうございます。1440円のお返しとレシート、それから引き換え用紙になります。それでは25日またおまちしております。」

「はい。よろしくお願いします!」
ふー。なんとかなった。クリスマスは奥さんが気合いを入れてクリスマスディナーを作ってくれるし、あと俺は当日にケンタッキーを買って帰れば完璧だ!

今年で35になるというのに、そこまで来ている幸せなクリスマスを想像すると未だに浮かれて頬が緩んでしまう。 

そしてふと、先ほど渡された引き換え用紙を見ると、一緒に渡されたレシートの裏に何か書いてあるのに気がついた。
***************************

おめでとうございます☆!

あなたは運良く"大人の階段"への参加に当選しました!!

この参加チケットを持って、ご来場お待ちしております。

日時:2015年12月19日

会場:東京都中野区中野3-15-15☆☆ビルB3

参加費:無料

開場:20時

持ち物:あなたの夢
***************************
ん!??

なんだこれ?!!

さっきの店員さん何にも言わずにレシートって言って渡してきたけど。まあ確かに裏、いや表はいつも通りのレシートだ。

どういうことだろう?不二家が何かクリスマスイベントでもやってるのか?日時は、、って今日だ。しかももうすぐ開場。

おめでとうございます!って書いてあるし、住所的には南口付近だからちょっと様子を見に行ってみよう。面白くなさそうだったら帰ればいいや。
そのまま駅に引き返し、定期券を使って改札を通り抜けて南口側に出てみると、何やら長い行列を見つけた。
中野サンプラザでのコンサートでもないのに駅前にこんな行列見たことないぞ。

そして手に握りしめたチケットを見て、まさかと思った。
「まさか、全員"大人の階段"に並んでるのか、、?」

そう呟きながら行列の先頭へと急いだ。

少し歩くと、行列が古い雑居ビルの入り口に向かっているのが分かった。
先頭までたどり着くと、ビルの入り口には"大人の階段はコチラです"と手書きで描かれたカラフルなポスターが貼ってある。そのポップさとは対照的に薄暗い入り口から長い階段が地下へと続いている。
なんだか不気味な雰囲気だな、、。もしかして新興のカルト集団に勧誘されたり高価な壺とか買わされたりするんじゃないか、、。そもそもこのチケットだって不二家とは関係無さそうだし、どうやって印刷されて配布されてるんんだろう。でもここまで来たら"大人の階段"が何か分かるまで帰れないな。

そう思い列の最後尾まで早足で引き返すことにした。

並んでる人達は一人で来ているのか、話をしている人があまりいない。皆、寒さに耐えながらも少しわくわくしているような、緊張しているような表情を浮かべて立っている。

うーん、年齢は20代~40代って感じか。見た感じ職業もバラバラそうだし、一体どういうイベントなんだろう。ますます気になってきた。
その時、列の側で一人困惑している見覚えのある顔を見つけ、思わず声をかけた。

「お、お前! こんなところで何やってんだよ」

「え?!!大槻先生?!!」

「おう!矢吹じゃないかー!久しぶりだな。」

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私も予想はしながらも"大人の階段"とは何なのか気になってきたところでバトンタッチお願いします、、!(*^_^*)

「大人の階段」 -28歳OL・矢吹典子-


西木です!リレー小説、最後の回!では早速行きます!


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昔から恋愛ドラマに憧れていた。



運命的な出会いをする二人。初めは意識もしていなかったのに、徐々に惹かれあい、抱きしめあう。そして甘い口づけ…
昔は、大人になったら、社会に出たら、私もそんな経験をごく自然にするんだと思っていた。甘くて素敵な恋愛ができるんだと思ってた。
でも現実は違う。恋愛ドラマの名シーンなんて、実際は起こりゃーしないのよね。


「もう28歳かー…」



ふとそう声に出して、タバコをふかした。最後の一本。
そういやこのタバコも、3年前に付き合ってた彼が吸っていたのを真似して吸ったんだっけ。遅れたタバコデビュー、とか言って楽しかったな。あの頃は。結局浮気で別れたけど。あのアホ。

今までろくな恋愛をしてこなかった。高校生の時初めて付き合った彼氏には、3時間で振られた。大学生の時付き合ったサークルの先輩は、サークルの女子みんなと付き合ってるようなやつだった。社会人になって、初めて付き合った同じ部署の先輩は、会社の経費を盗み、クビになってどこかへ消えた。そんで3年前付き合った人には浮気された。しかもそいつ4股だった。




「タバコ…買いに行こう。」



無意識にそんな独り言をつぶやいた私は、中野にある家賃7万5千円のアパートを出た。

丸井の近くにあるアパートから、ちょっとタバコを買いに出てきただけだったのに、なんだか少し街を歩きたくなってそのまま駅の方に向かった。

今日は12月19日。あと5日もすればクリスマスイブ。このままだと今年も一人でクリスマスを過ごすことになるのかな。
いや、それだけは避けたい。どーしても避けたい。一昨年は家で一人明石家サンタを見ていた。去年は一人で恵比寿ガーデンプレイスのイルミネーションを見に行った。どっちも死ぬほど寂しかった。

いやだ。もうあんな寂しい思いはしたくない。
あと5日。あと5日で彼氏を作る。作ってみせる。絶対作る!!



そんなことを考えながら歩いていると、ふと目の前に行列が見えた。あれは何の行列だろう。
近くまで行ってみても、とにかく行列が長く先頭が見えない。
何だか気になった私は、すぐ近くでその列に並んでいた髭の生えた男に、聞いてみた。


「あの、これって何の行列なんですかね?」

『………』



すごく怪訝な顔をされた。そんで無視された。
え、なんだこの人。もっかい聞いてみよ。



「これって何の行列なんですかね?」

『…”大人の階段”さ。”大人の階段”。』

「……は?」

『君は誰だい。』

「え…いや、ちょっと何の列か気になって聞いた、ただの通りすがりです。」

『そうじゃなくて、名前とか職業とか答えろよ。』



…なんだこいつ。



「…矢吹典子。広告会社に勤めてる、28歳です。」

『ふーん。』

「……」

『…なるほどな。いいか。ちゃんとお前が身分を証明したから教えてやる。一回しか言わないから、よく聞けよ。”大人の階段”には夢がある。とにかく夢があるんだ。

「…へ?」


私は、何を言われたか全くわからなかった。
そしてその人はそれ以降黙ってしまった。




「あの…”大人の階段”って何ですか?」

『………』



え、まじか。目線も合わせようとしない。
しょうがないから、私はもう少し行列の先を歩いてみることにした。


「私…何やってるんだろ。」

そんな風に思ったが、気になってしまったものは仕方がない。”大人の階段”とやらの、正体を暴いてやる。






その後、約15分は歩いただろうか。
どんなに歩いていっても列は全く先が見えない。
なんだこれ。だんだんイライラしてきた。あーあ。こんなことなら家にでもいればよかったかな。
でも家にいたらいたで、寂しいからな。あーあ。彼氏が欲しい。本当にあと5日間でできるのかな。いや、現実的に考えて無理か。



その時、後ろの方から懐かしい声が聞こえた。

『お、お前…こんなところで何してんだ?』

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この先の展開が全くと言っていいほど僕にも分かりません笑
恋愛モノか、ファンタジーか、はたまた世にも奇妙系か。この話が今後どのように料理されていくのかが楽しみです^^
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