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「あなたが落としたのは、」ep.3 秋

10月もあとわずかですね。明日はハローウィン♪
そして、前回の中村さんが告知してくれましたが、いよいよ明大祭が始まります。
宮本ゼミ5期生&6期生合同企画も是非是非よろしくお願いします!
第131回明大祭

はい、ちゃっかり宣伝もしたところで、本題のリレー小説に行きたいと思います。今回は遠藤が担当させて頂きます。さてさて、どんなエピソードになるのでしょうか?!
若干不安ながらも…
それではスタートです!!




ハァ、ハァ
そろそろあるはずなんだけどなあ…

気づけばいつの間にか別の場所に来ていた僕は、自分がいまどこにいるのか把握できなかった。
通りがかりの人に最寄りの駅を聞き、教えてもらったとおりの方向に走っているつもりなのだが一向に見当たらない。そう思った瞬間、目の前の横断歩道の先に駅舎らしきものが見えた。信号の緑色のライトが点滅し始めている。一秒でも無駄にしたくない僕は、息切れしながらも更に加速する。信号が赤へと変わる。ぎりぎりセーフ。

ホッとした次の瞬間だった。

ズルッ、ドテッ

雪で濡れて滑りやすくなっていたのか、勢い余って転んでしまった。すぐに起上ろうとしたが、アイタタタ。腰を思いっきり打ってしまった。ああ情けない。


「大丈夫?雪が降っているのにそんなに慌てて走るからだよ。」

なんだか聞いたことのある声だ。顔をあげるとそこには見覚えのある女の子?! ずり落ちた眼鏡をかけなおしてみると目の前にはさっきの青ずきんの子だ?!しかし、今は緑色???のずきんを被っている。

「えーっと。(ゴホン)あなたが落としたのは、こちらの赤のペンライトかな?それともこちらの緑のペンライトかな?」

今度は両手に二色のペンライトを持っている。

「もう、何度言ったら分かるのかなァ。僕はペンライトも落としてなんかいないよ。とにかく本当に急いでるから、悪いけど君にかまっていられないんだ。じゃあ、行く・・・」

「それではこちらの、、、」

カチッ

赤の光と緑の光が混ざって黄色い眩い光となり目が眩んだ瞬間、

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ」

ドテッ

ん、クサッ!!
なんだろう?この臭いは・・・

でも懐かしい感じがする。

ふと顔をあげると、そこはイチョウ並木だった。あれ、さっきまで雪が降っていたはずが、辺りはすっかり黄色い景色へと変わっている。

そして臭いの正体は...落ちている銀杏だった。


ここって、よくヒカリとデートで来た場所じゃないか?久しぶりだなあ。最後に来たのはいつだろう?去年だったか、いや一昨年だったか?まるで昨日のことのようだが・・・

毎日追われた生活をしているからか月日があっという間に過ぎていく。

そういえば学生の頃はあちこち行ったなぁ。いろんなところに足を運んでは季節を感じて時間を過ごしていたのに、いつから僕はこんなに余裕のない生活を送るようになってしまったのだろうか?

そういえば、ヒカリに告白したのも学校の校門横にあった大きなイチョウの木の下だった。
後夜祭のイベントで皆で色の違うペンライトを持ってダンスを踊って...偶然ヒカリとペアになって、それで彼女を好きになったんだよな。その時、確か彼女は赤のライトで僕は緑のライトを持っていたんだ!

あれ?向こうで手を振っているのはヒカリ…??

近づこうとすると笑いながら逃げていく。

「おい、ヒカリ! 待ってくれよぉー。」

そしてヒカリは急に立ち止まって振り返りペンライトを差し出した。

カチッ

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ」

ドテッ
アイタタタ・・・
またもや腰があああ

「んふっ、おかえりなさい。思い出せたかな?では改めまして、もう一度お尋ねします。あなたが落としたのは、こちらの赤のペンライトですか? それともこちらの緑のペンライトですか?」

女の子はまたもや首を傾けてこちらをじっと見ながら僕の答えを待っている。
 「もう何度も言うけど、僕はカメラも花火もペンライトも落としていないんだよ。」

カチカチカチッ!! 

「さすがヒカル!三度目も正直だったあなたには、どっちのペンライトもあげましょう。さあ、どうぞ!」

「もう、だからさあ…」

カ・チッ

あれ?またいなくなっちゃったよ。


二つのペンライトを残して、またもや緑ずきんの女の子は消えていた。

気が付くと僕は駅前に立っていた。
いつの間に駅にたどり着いていたのだろうか。そしてあのずきんの女の子はどうして僕の前に何度も現れるのか?謎は深まるばかりだ。

しかし、思い出がよみがえるにつれてヒカリが恋しくなった。
あいつ、最近どうしているのかな...

ハッ、ここで浸っている場合ではなかった。とにかく、今は目的地に急がなければいけない。

僕は再び走り始めた。

(最終回に続く)



初体験のリレー小説、ほんと難しかったです。今までのお題の中で一番ハードル高かった気が…・

果たしてヒカルはヒカリちゃんに会えるのかな?と気になりつつ、、、
第4回の石垣華ちゃんへバトンタッチ。次回はいよいよ最終回です。
華ちゃん、よろしくお願いしま~す。
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「あなたが落としたのは、」ep.2 夏

こんにちは!リレー小説って難しい!
最近泣ける映画マラソンもどきをして号泣しまくっていた中村です。

もうすぐ明大祭!ということでちょっと宣伝。

~~
11月1、2日に明大祭が行われるのですが、
そこで我が国際日本学部、宮本大人ゼミカフェをします♪
その名も
「喫茶 時をかけるゆとり~90年代で待ってる~」です!!

90年代から2000年代にヒットしたものたち(テレビやら漫画やらゲームやら)の思い出に浸れるような、私達くらいの世代が「うわ~懐かしい!」となれるようなものにあふれたカフェにできたらなと思っています。


場所は第三校舎、4階の裏側…! 45番教室です!
ちょっとわかりづらいかもですが、ぜひぜひお越しくださいませ。
ゼミ生も、様々な衣装でお待ちしております(*'▽')!



明大祭ホームページはこちら!【PC版】【スマホ版】←クリックして別ウィンドウで開きます

~~

では、リレー小説の方、始めていきたいと思います(*'▽'*)



信号を渡り終え、行ってしまった女の子のことを考えながら再び目的地へと急ごうとする。

「んん?」

なんだかさっき走っていた道と違う…?
あれ、僕はこんな道を走っていたっけ…?

まあいいや、ランドマークタワーがあそこにあるから、進むべき道はこっち側だろうな。

夜空から雪がちらちら降っていて、冷たい風がほほに当たる。
白い息を吐きながら、僕はまた走り出した。

すると、

ドンッ

「わわっ!!また…!」
僕にぶつかったその女の子は、青いずきんをかぶっていた。
今度はメガネが落ちてしまった。

「ん?!青ずきん…?さっきの子??」

んふっ。ごめんごめん。
メガネ落ちちゃったね。はいっ。」

黒目がちなその少女は僕にメガネをかけさせると得意げにこう言った。

「えーっと。(ゴホン)
 あなたが落としたのは、こちらの青の花火かな?
 それともこちらの緑の花火かな?」
両手に2つの色の手持ち花火を持っている…

「ええっ、またか!いい大人が花火なんて持ち歩かないよ!
それより僕は急いでるんだ!ごめんね、そこ通らせ」
「それではこちらの、、、」

バシュ!
手持ち花火が美しい水色の火を噴いた。

またも眩い閃光に目が眩む。

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁあああっ」

ザッパーン…
ザザー


ん?波の音がする。
ここは…

海だ!

夜の海。砂浜。隣に立っているのは…え?
高校生くらいの女の子だ。
ちょっと離れて、向こうを向いている。
うしろ姿しか見えないが、女の子は少し上ずった声で話し出した。

「ここ、花火が良く見える穴場なんだあ。
こないだ見つけたんだよ~、すごいでしょ!
…誰にも教えないでよ?
せ、、せっかく穴場なのに、余計に人が増えんのやだしっ!」

これはいったい何なんだ…?

「ねぇ、君は一体…」
隣に立ってあっちを向いている女の子に近づこうと一歩踏み出したところ、


「わわっ!!」

またもメガネがない!
足元にあった大きめの石に気づかずつまずいて体が傾く

「危ないっ!!」

ドサッ

…僕はその女の子の方に倒れこんでしまった!!

うわわわ!ごめん!ごめんね!
違うんだ、これは、そのつまづいちゃって…ん?」

その時、
僕の裸眼の視力でもとらえられる程、彼女の顔を間近で見て、
はっきりと認識した。

「って…君は、ヒカリ!?

その時、

ヒュルルルル…

ド――――――――――ン!!!


夜空に打ちあがった花火のまぶしい光にからだが包まれた。

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ」

ドテッ。

地面におしりを打ち付け、意識が戻る。

「いっててて…。二回目だよ二回目!君は何なんだよもう!」

「んふふっ、おかえりなさい。思い出せたかな?
 では改めまして、もう一度お尋ねします。
 あなたが落としたのは、こちらの青の花火ですか?
 それともこちらの緑の花火ですか?」

首をかしげて目をぱちくりさせている女の子の顔は真剣そのものだ。

「だから!僕は花火なんか落としてないって!」
パンッ
あったり~!ヒカル、えらいえらい。
正直に言ってくれたあなたには、どっちの花火もあげちゃいます。
さあ、受け取って!」

「え、あ、ちょっと!ってあれ?いなくなっちゃった。」

僕に花火を渡して、青ずきんは消えていた。

「さっきの海にいた女の子はヒカリだったよな…」

つい、ポツリとつぶやく。
ヒカリは、今付き合っている彼女だ。僕の名前はヒカルなので、ヒカリとヒカルで光コンビのカップルだね、なんて付き合いたての高校時代にはよく言われていた。
最近はデートなんて全然できていない。僕の仕事はいまとても忙しいのだから仕方ないけれど…。

そういえば高校の夏、ヒカリが花火の穴場スポットに連れて行ってくれたことがあったような…もうあれから何年もたつし、まだあの時は付き合ってもいなかったし、すっかり忘れていた。僕が石につまずいて、ヒカリの方に倒れこんじゃったこともあったな…。
あ、さっき「入学式がはじまる」とか言ってぼくの腕を引っ張ったのもきっとヒカリだ!



なんだかたまらなく懐かしくなった。
僕、ヒカリとの思い出、忘れかけているのかもしれない…


っと!!
いまは急がなきゃいけないんだった!
ん?あれ?
またいる場所が変わってる。
何でずきんの女の子に会うと、ヒカリとの思い出を見せられ、別の場所に飛ばされるんだ??

とりあえずまた目星をつけて目的地まで急ごう。

さっきよりも雪が積もってきて、少し足場の悪くなった道を、僕はまた走り出した。





(第3回に続く)


恋愛系の要素難し…
ブログテーマ「付き合ってみた」でがっつり恋愛系を書かなかった自分にはなかなかきつい部分もありました…笑
個人的には結末をなんとなく予想しつつ書いているのですが、どうなるのでしょうか!
ヒカル君が主人公、ヒカリちゃんが、その彼女&回想シーンの女の子なのでパッと見間違えてしまいそうですがどうかお間違いなきよう!(>o<)
メガネで真面目で黒髪で一人称僕な男子って良いですね…!


お次はあやの!よろしくお願いします(●^o^●)

「あなたが落としたのは、」ep.1 春

こんにちは!ブドウの美味しい季節ですね。
食欲の秋、絶賛満喫中の岩谷です。
それではリレー小説、第3話 ep.1 春、早速ですが始めさせていただきます。




「っと!危ない!」

急に足を止めた拍子に、かけていたメガネがずり落ちた。
慌てて掛け直して目の前に飛び込んできた赤い物体を捉え直す。

 こども?ずきん?赤ずきん??

と思った瞬間、赤ずきんの中から見知らぬ女の子の顔が現れた。
「んふっ、びっくりした?」(にっこり)

まるで僕のことを知っているかのような顔で話しかけてきた。
 
「ヒカル、」
 えっ、、、!!

「そんなに急ぐと滑って転ぶよ。ほら、雪も積もり始めて」
「えっ、ちょ、ちょっと!キミ誰!?誰かは知らないけどなんで僕の名前知ってるの?!僕に何か用?!あっ、いや、時間がない。と、とにかく今はキミの相手をしている時間がないんだ。困るよ。いい加減、通してくれないかなっ。」

自分でも驚くほどの速さで捲し立て、歩き出そうとした途端、
 
「んふっ。まぁまぁ、落ち着きなさいって。」
僕の焦りようなんてお構いなしに、その子は持っているカゴの中をしきりにゴソゴソ漁っている。

 え、何だよ。なに探してんだよ。時間ないんだって!
 
「ちょっとキミ、ごめんね。僕、本当に急いでるんだ。
 お母さんとはぐれちゃったなら来た道を戻ればいいよ!一緒に探してあげられなくてごめんね。もう行か」
あった!!
 えーっと。(ゴホン)
 あなたが落としたのは、こちらの青のカメラかな?
 それともこちらの赤のカメラかな?」

両手に2つのカメラを乗せた迷子と思しき女の子が、急に真面目な顔で尋ねてきた。
 
「え、、、?なんて?落とした?カメラ?僕カメラなんて落としてな」
「それではこちらの、、、」

カシャッ
 
眩い閃光に目が眩んだ瞬間、


うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ


僕はなにかに引っ張られながら、意識が飛んだ。


グイッ

「ほら、こっちだって!ヒカル、ぼけっとしないで!」
よろめきながら、勢いよく引かれた痛みで意識が戻った。
「え、、、?どこだよここ、、、?」

てかこいつ、、、

僕の腕を勢いよく引っ張りながらずんずん歩みを進める彼女の長い髪が風に揺れる。
 
「ねえ!ちゃんと歩いてってば!」
 
あれ、、この声、、、どこかで聞いたことあるような、、、どんっ!
 
「あっ、す、すいません!」
道行く人の流れに逆らって進んで行く彼女の顔は僕からは見えない。

ちょ、ちょっと待って!一体どこに連れていくつもりなんだ?」
「は?まだ寝ぼけてるの?入学式でしょ!」
「にゅうがくしきぃ!?ははっ、冗談言うなよ!
 今何月だと思ってるんだよ。っていうか僕、急いでるんだってば!!」

ってぇえっ!?

今になって気がついた。雪が止んでいる。雪が止んでいるどころか空が明るい。
白く霞んだ雲が空を泳いでいる。ぽかぽか陽気でなんだか心地が良い。

 って和んでる場合じゃない!
 
「ねえ、ちょっとキミ!今何時?!」
「えっ?あと10分で始まるって言ってんでしょ!13時から開始!ほら早く!」

「いちじ?!?! さっきまで19時に間に合うように走ってたんだぞ?!
 それに入学式って何だよ!時間も季節もおかしくなってるって、、、」
   
 一体、なにがどうなってるんだ?!

わけのわからない状況に混乱しながら、ましてや全速力で思考回路もままならないまま、なすすべもなく僕は彼女の後ろを追いかけた。

「ふう〜!間に合った!んふっ、やっぱり私の方がはや〜い!意外と余裕だったね〜!」
くるっと向きを変え、僕に向かって両手を振る彼女と初めて向き合った。

のだが、顔がよく見えない。
「んっ?あっ!めっ、メガネ!メガネがない!あれっ」
顔に手を当ててもポケットに手を突っ込んでもしゃがみこんで辺りを手探りしてもメガネはいっこうに見つからない。
 
「あはは、ヒカル何してんの!ってわぁっ!ヒカルの頭の上!
 その桜、すっごく綺麗!満開だね!そのままそこにいて!記念に写真、撮ってあげる!」
 
「えっ?なにっ?さくら、、、っ?
 
カシャッ

眩い閃光に目が眩んだ瞬間、

うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ





ドテッ。

冷たいコンクリートに両膝を打ち付けられた痛みで、再び意識が戻った。

「いてて、なんだよもう!って、ああっ!
落ちてくる雪の先には見覚えのある顔が見える。

「んふっ、おかえりなさい。思い出せたかな?
 では改めまして、もう一度お尋ねします。
 あなたが落としたのは、こちらの青のカメラですか?
 それともこちらの赤のカメラですか?」

僕の答えを待つかのように女の子は首を傾げてこちらを見上げている。
 
「、、、僕は何も落としてない。落としたんじゃなくて、」
パンっ
だ〜いせいか〜い!やっぱりヒカルは正直者だね。
 それじゃあ、正直者のあなたには青のカメラと赤のカメラの両方をあげましょう。
 はい、どーぞっ!」
 
「えっ、あっ、ありがと。っじゃなくて!だ、だから僕はっ」

パァーーーーーーン、キキィッ
 
バカヤロウ!赤信号だろ!危ねえだろうがっ!!」

ハッと気づいた時、僕は横断歩道の真ん中で膝をついていた。
青いカメラと赤いカメラが道路に転がっている。
再びクラクションを鳴らされ、その二つを抱え上げ、咄嗟に走り出す。
信号は赤から青へと切り替わった。


    あれっ、、、どこ行っちゃったんだよ、、、








(第2回に続く)



はい、ここでバトンを渡します。
はてさて赤ずきんをかぶった女の子はどこへ行ってしまったのでしょうか。
ボクっ娘ならぬ僕っこヒカルくんはどうしてあんなにも急いでいるのでしょうか。
全4回、後の展開は私にもわかりません!(笑)
さや、次よろしく〜。^^

「以上、東京からお送りしました。」~それぞれの年明け編~

こんにちは!
第2話の最終回はわたくし菅野が担当いたします。
いやあ、難しいですねこの企画は。
ただ、みんなの想像力と文章力、若干人のこと考えながら話をすすめないといけないところから生まれるチームワークなどは、まさに宮本ゼミらしい企画でもあるかと!


それではどうぞ!

――――――――――――――――――――







「以上、東京からお送りしました。」

「はい、ありがとうございました。

続いてのコーナーはこちらッ!お正月太ってしまったアナタ、大注目で~す」


年末年始、テレビの情報番組では、重要なニュースに限ってないがしろにされる。
年末はどさくさにまぎれようと結婚ラッシュを迎える芸能界、デパートの高額福袋、年が明けても芸能人の誰がハワイに着いたとか、紅白歌合戦の裏側、とか。
まあ年の終わりと始まりに、わざわざ暗いニュースを聞きたいなんて人もいないだろう。

年末におきた、有名飲料メーカーの薬物混入事件も例外でなかった。
いや、薬物、かはまだわからない。

事件は12月26日、飲料メーカーの会社員男性が倒れた状態で見つかったことで発覚。
倒れる直前に飲んだと思われる缶コーヒーの中身を調べると、睡眠導入剤と同じ成分が検出されたという。
薬物の正体も、混入過程も分からず、その上コーヒーが未発売の試供品であることから不明な点が多すぎて、年末年始のニュースでもあまり取り上げられなかった。
倒れた会社員の命に別状はなく、即日退院で済んだ。

いやあ、こんな時期にこんな事件に巻き込まれたら、たまったもんじゃないだろうな。
ニュースによれば飲料メーカーの社屋は隣の区らしいから、自分もちょっと危なかったかもしれない。
いやいや、ただでさえ冴えないこの俺が、さらに不運な立場にさらされることもないか。




******



私は、首元のちいさなネックレスを無意識にさわりながらぼーっとテレビを見ていた。

あの日からお守りのようにつけている華奢なデザインのネックレスはクリスマスの翌朝、レンがわざわざ家まで来て母に預けていったものだ。
クリスマスにデートをしていたのだから、直接渡せばいいものを、初めてこんなに大人っぽいプレゼントを買ってしまい、緊張のあまり渡すタイミングを逃したらしい。
家族ぐるみの付き合いだから、母も気軽に受け取って、朝早くからありがとう、とお礼に渡したのがあのコーヒーだった。

結局レンはコーヒーを飲んでいなかった。
親しい人にもらったとはいえ、自分の好みに対するこだわりは捨てきれなかったようだ。
コーヒーはそのあとで、捨てた。不気味なものが周りにあるのは気持ちよくない。
父も「普通」といっていたのだから、味にも期待できないだろう。


テレビでは、クリスマスにデートしていた場所で打ち上げられていた花火の様子が放送されていた。
あの日施設側がサプライズで打ち上げた花火を見逃したことは、後になって気づいた。
コーヒーをもらう前に周りから人がいなくなったのは、皆それを見に行っていたからだった。
今思えばそんなことまで怪しいと感じてしまった自分の危機予測センサーの強さに少し笑ってしまう。


携帯の着信音が鳴った。
彼から次のデートの誘いだった。



******



ネコでいるのが、嫌になることがたまにある。

元飼い猫は格上、というネコ界の特権を最大限に生かし、俺はこの街の帝王となった。
なにもかも手に入るのに、なにか満たされない。
自分を捨てた人間をこらしめたくなって、子分たちに毒薬をつくらせて、人間のからだを乗っ取っとろうとしたのはこれで4回目。

今回も失敗した。
人生うまくいってる人間ほど乗っ取るのは難しい。
そして、失敗するときはだいたいいつも、思いもよらないやつに乗り移ってしまう。
というのも、万が一シンクロ率が低い事態に備えて、子分たちが余分に同一剤を仕込んでくれているからだ。
今回も子分は全部で3つの缶に同一剤を用意していた。

狙っていた人間は予定通り缶を手にしたが、それを違う男に渡してしまった。
自分の「容器」にはふさわしくない、冴えないやつだったから、シンクロ率が低かったのは幸いした。

予備のうちの一本は再び狙っていた男のもとへ渡ったが結局その男は飲まなかった。
人生うまくいってるやつは運命さえも操ることができるのか。

残り一本、途中まで同一化できた別の男もまた「容器」にはふさわしくなかった。
だから、もう一度着実に計画を実行したいという気持ちが強かったのか、結局その男に同一化することもなかった。

自分を捨てた、憎むべき人間め。やつらが「年末」と呼んでいるこの時期はとくにうるさい。いい大人のくせに、年の最後の日だけ盛り上がりやがって。
いつも子分がエサをもらってくる商店街のおばちゃんも、この時期はしばらく居なくなる。
そんなにネコが好きなら、そんなにネコを可愛がりたいなら、家で飼ってくれればいいのに。
エサをくれるのはありがたいが、中途半端に甘やかすのもやめてほしい。
そうやって考えているうちに、所詮自分はネコなのだ、人間がいなければ何もできないのだと痛感する。


本当は気づいているのだ。人間に報復しようとしても何も変わらないのだと。
自分はただもう一度、人間に愛されたいのだと。



******



何度も仕事を辞めようと思っている。

今度はついに、会社に殺されそうになった。
まさか、自分の会社の商品に薬物が入っていて、まさか、それを自分が飲んでしまうとは。
その時のことはよく覚えていないが、コーヒーを飲んだあと、とにかく感じたことのない恐怖を感じたのは確かだった。
原因となった薬物の成分はまだ分析中らしいが、そこまで強力なものではなかったことは確からしい。


十年間経理部にいたが、最後の4年は辛くて仕方がなかった。同じ毎日のくりかえし。
異動でも、転職でもいい。とにかく違うことがしたかった。

そんな折、空きがでた営業への異動が急に決定したのが去年の春。
あれだけ違う仕事がしたかったのに、自分は人前で話すのが苦手だということを忘れていた。残業も多く、またしても苦痛の毎日だった。

クリスマスのあの夜、モニター調査の仕事で最後の女性に声をかけた時も、上手く話せず怪訝な表情を浮かべられた。
もし渡したコーヒーにも薬物が入っていたら、完全に自分が犯人だと思われていただろう。


テレビでは、お正月の特番もネタが尽きてきたのだろう、つまらないバラエティ番組がほとんどだったが、外国人が日本をヒッチハイクして旅する企画はまあまあ面白かった。

「大人は仕事しなければいけない」って、誰が決めたのか。
今年こそ仕事なんか辞めて、こうやって自由に過ごしたい。



******



冴えないやつでも、生きるのは楽しい。

クリスマスの日以来、どう考えても気まずくて、ヌクモトのいるコンビニには行けなかった。
しかし、年も変わって仕事初めのこの日、やっぱりヌクモトのことが気になって、帰りがけに立ち寄ってみることにした。

店内にヌクモトらしき人はいなかった。
入ったからには何か買おうと粒ガムを手に取りレジへ向かう。

「いらっしゃいませー」

「あ…のうー ヌクモトさんって今いますか?」

それは意図せず発したことばだった。
そしてレジのおばちゃんの

「ん?ヌクモトさん?ちょっと知らないわね…私パートで週1回しか来ないから…まだ会ったことない方かもね」

という返事を聞いて初めて自分の失敗に気づいた。
ヌクモトなんて名前、自分以外の誰も知るはずがない。

自分の冴えなさに改めて落ち込む。

なんともいえぬ恥ずかしさと寂しさを感じながらコンビニを出た。

ヌクモトはまた戻ってくるのだろうか。
再び出会ったときの気まずさよりも、戻ってきてほしいと思ってしまう気持ちの方が強い自分がいた。

大人になってから、こういう小さな出会いを大切にするようになった気がする。そうやって生きることを愉しめるようになった。
クリスマスのあの夜、自分にとっては何の変哲もない平日の夜が、ヌクモトによって少しだけ彩られたことには感謝したい。



******



店内はチョコレートばかりで嫌になった。
きっと明日から、包装紙を変えてホワイトデー用の売り物にするのだろう。
いや、俺だって同じ部署の女の子から5つは貰った。
買おうと思っていた週刊誌を手に取りカバンの底の財布を探しながらレジへ向かう。

「温めますか?」

と聞き覚えのある声がした。



<オワリ!>



―――――――――――――――――――――

はい、ぎゅぎゅっと、おさえ込みました!笑
みんなの思っていたような最終回じゃなかったかもですが、こんなんでご勘弁を!

あと、忘れられかけていた全体のルール、「大人」のキーワードもねじ込んでおります。笑


次回からは第3話がはじまります。
どんなお話になるのか楽しみですね!
岩谷さんよろしくー!

「以上、東京からお送りしました。」~仕事熱心な私と闖入者、それを見守る...クリスマス編~

どうも、第4回担当のウルマです
とても話が複雑になってきてるので続きを書くのが難しいのですが…
頑張りますっ!!

*************************************

「お嬢さん、お一人ですか?誰かお連れは?」
周りの人がいなくなったのを確認して私が声をかけたのが今度のターゲットだ。
彼女は訝しげに
「彼が今電話しに行っているので・・・あの、何か用ですか?」
と答えた。
「いや、ちょっと君の彼氏さんに用があってね。」
彼女にそれを悟らせないようにあくまで彼氏の方に用があるようにごまかす。
そこに件の彼氏が戻ってくる。
「この人だれ?」
そういえば自己紹介をしていなかった。
怪しまれてはいけないと思い
「申し遅れました。私、○○会社の者です。」
と言って身分を明かすと
「あっ、俺さっきコーヒー買いましたよ!たまたま、バイト先のお客さんと
会って、渡しちゃいましたけど。」
と彼氏が答えてくれる。
(どうせなら飲んでいてくれればよかったのに...)
とは思いつつも
「そうでしたか、駅のほうで新作のコーヒーを配っていたのですが、まだ余りがありますので良かったら、どうぞ。彼女さんも。」
と本当は持って帰るつもりだったコーヒーを渡す。
「ありがとうございます!!」
と彼氏は快く受け取ってくれたが、彼女は
「・・・。」
と無言で受けとるだけだった。
反応に首を傾げつつも
(よし...これでまた一つデータがとれるぞ)
と思っていると
「でも今ちょうどお茶してたので、またあとで飲みます。」
と彼氏。
それはマズイ!!
飲んでみて感想を聞かなければ渡し損じゃないか!
私は慌てて
「今飲まないと、あったかいコーヒーが冷えちゃいますよ!!!???」
と言ったのだが
「冷たいのでも大丈夫なので。失礼します。」
とそそくさとその場を離れていってしまった。

「クソッ...渡さなければよかった...」
とうなだれる。
実はこのコーヒーはまだ試作段階で、モニターとして町の人々に飲んだ感想を聞いている段階なのだ。
このコーヒーのメインターゲットは女性層だが先入観を持たないで飲んでもらいたいので、それを悟らせないようにしていたのだ。彼女だけでも飲んでくれればよかったのだが...。
男性の意見もいらなくはないので、とりわけ直前に従来の当社のコーヒーを飲んでいてくれればより明確な意見が聞けそうだったので落胆は大きかった。
「まぁ、駅のほうでノルマは達成できたしいいか...」
と気持ちを切り替えて、顔をあげると
「...?」
何か違和感を感じる。
いったいなんなのかと思っていると、周りに全然人がいないことに気付く。
「さっきまでは結構人いたよな...」
この時間帯、ましてやクリスマスのこの時期にこの場所に人がいないなんてことは普通に考えればあり得ないはず。
「そういえばあの二人組に話しかける時もだれもいなかったな... 」
最後の2つ、渡すところを他の人たちに見せたくなかったため好都合だと思っていたが、今考えればおかしい。
「そういえば彼女、ずっと不審そうな顔してたな...。あっ」
とようやく自分が不審者だと思われていたことに気付いた。
同時に自分の発言がかなり不審なものであったことにも気付き、赤面した。
「だからあんなに塩対応だったのかぁ...。とするとあの彼氏の爽やかな対応は不審者の逆鱗に触れないようとする行動だったのか...?」
不審者に思われたことと心地よかった対応の裏にそんな理由があったのかという二重の意味で、またかなり恥ずかしい対応をしてしまったということに切り替えたはずの心がまた沈んでしまった。
「それはそれとしてなんで人がいないんだ...?」
という考えに戻ってしまう。
「そういえば2ちゃんの都市伝説スレで同じような状況の話見たことあるような...」
なんだか怖くなってきてさっさと帰ることにしようと肩にかけたバッグをかけ直すと
「チャプン...」
という音がバッグから聞こえてきた。
「...?」
バッグを覗いてみると、配りきったはずのコーヒーが一つバッグに残っていた。
「1つ見落としてたのかな?まぁなんにせよラッキー!戻って飲むか!」
と残った仕事を片付けるため、会社方面の電車の改札へ向かった。

「ふぅ...」
会社に戻り、今日とったデータを一通りまとめ終えつつあった。
時計を見てみると、日付はとうに変わっていた。
「根を詰めすぎたかな...。でももう一踏ん張りだ、頑張ろう。」
そこでバッグにコーヒーが残っていたのを思いだし、バッグから取り出す。もう温かさなど微塵も残っていなかったが、一気に飲もうと思っていた分都合がよかった。
「よし、頑張るか!」
とコーヒーを一気に煽った直後、何故か急激な眠気に襲われた。
「なんで...コーヒーを飲んだのに...?」
普通とは真逆の効果に困惑しつつも眠気は耐えられない程になっている。
私は抵抗するのを止め
「仮眠室...」
とせめて寝る場所に行こうと移動する。
仮眠室に到着し、ベッドを認識した瞬間、私は体を支えていることができなくなった。
思考が完全に闇に落ちる刹那
「そういえばあのコーヒー、試作コーヒーの味じゃなかったような...」
私の意識は闇に沈んでいった。



「いまは夜中じゃないか!俺は夜中しか動けないわけ!!!!!!????」
目覚めた芳一は自分の体が社畜リーマンの俺だと誤解しているようだった。
しかし周りを見てみると俺の部屋ではないことに気付く。
「ここはどこだ!?」
困惑しつつもコーヒーの影響か催した芳一はそのまま粗相をしそうになるが
「そうだ、今は人間なのだったな」
と思い直し、トイレへ向かう。
致し終えた芳一が目にしたのは
「な、なんだこの男は!?」
と叫びながら顔を触っている私の姿だった。
何がどうしてこうなったのか、私が飲んだのは『同一剤』であり、芳一は何故か私の体と合体していたのだ。
芳一の頭の中では
「自分の計画が失敗したのか!?いったい何故!?」
と疑問が渦巻いていた。
そんな芳一に頭痛が襲いかかる。
「なんだこの痛みは...!」
頭痛は段々と痛みよりも痺れに変わっていく。
「なんだこれは...なにもかんがえ...られ...ない...」
目の前の鏡を見ても自分の姿を認識できない。
そして芳一の意識は...消えていった。

「あれ?私はトイレでいったい何を?」

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くぅ~疲れましたw
これにて芳一編(?)完結です!
...というネタは置いといて、とりあえず第4回はこんな感じです!
話をまとまっていく方向に持っていくどころか広げてしまったような気がしますが、自分的には自分のパートと芳一をまとめたつもりです!
とにかくアンカーの菅野さんへ広がった風呂敷をきれいに畳んでくれることを期待してバトンタッチ!

「以上、東京からお送りしました。」~幸せなはずのクリスマス編~

第3話の中山です。
はじめましょー。

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私は水族館で彼を待っている。

「まだかなぁ・・・あっ、来た!!」
「ごめんね、待たせて。寒くない?大丈夫?」
「うん。大丈夫///」
初めてのクリスマスデート。彼はとにかく優しい、ますます好きになっていく。

私たちは水族館で今流行りのプロジェクションマッピングを見ながら、デートを楽しんでいた。
このまま、順調に幸せなクリスマスを送れる。


と思っていた・・・。


ピピピピピッ、ピピピピピッ
彼のケータイが鳴った。
「ちょっと出てくるから待ってて!」
「わかった。」

・・・。

あれ?そういえば、何で誰もいないの?さっきまであんなにカップルがいたのに。
何で私一人だけ?怖くなった。


すると、スーツを着た男が寄ってきた。
「お嬢さん、お一人ですか?だれかお連れは?」
「彼が今電話しに行ってるので・・・あの、何か用ですか?」
「いや、ちょっと君の彼氏さんに用があってね。」


彼は電話から戻ってきた。

「この人だれ?」
「申し遅れました。私、○○会社の者です。」
「あっ、俺さっきコーヒー買いましたよ!たまたま、バイト先のお客さんと会って、
渡しちゃいましたけど。」
「そうでしたか、駅のほうで新作のコーヒーを配っていたのですが、
まだ余りがありますので良かったら、どうぞ。彼女さんも。」
「ありがとうございます!!」
「・・・。」
「でも今ちょうどお茶してたので、またあとで飲みます。」
「今飲まないと、あったかいコーヒーが冷えちゃいますよ!!!???」
「冷たいのでも大丈夫なので。失礼します。」


私たちはその男から離れた。

「これ、どうしよ。俺、いつもコーヒーはブラックミルクコーヒーって決めてんだよなー。飲む?」
「さすがに2本は飲めないよー。」
「そかー。てか、あの男、怪しかったよな。」
「うん、怪しかった。だって、私たちにしかコーヒー勧めてなかったし。」
「このコーヒー何か秘密があるのかな。」
「秘密って、例えば?」
「うーん実は中に薬が入ってて、飲むと人格が変わるとか、死ぬとか?」
「変なこと言わないでよ!!!」
「ごめんごめん。冗談だって(笑)」


彼は冗談で言っていたが、私はなぜか怖くなった。このコーヒーには何かある。
私は彼がコーヒーを誤って飲まないよう、彼の分も貰った。

楽しみにしていたクリスマス。途中まで楽しかったがこのコーヒーが私たちの手元に来たときから、
コーヒーのことで頭がいっぱいで楽しめなかった。
終電の時間まで彼と一緒にいた後、それぞれ自分の家に帰った。


家についた。
このコーヒーどうしよう…。
と思いながらも、疲れてしまい服を着たまま寝てしまった。



「朝よー。早く起きなさい!」
お母さんの声だ。もう朝なのか。頭がボーっとしている。昨日のことを徐々に思い出した。
机を見てみると、あの2本のコーヒーがない。どこにもない。

なんで!!!???どこいったの!!!???

私は慌てて探した。
「お母さん、私の部屋にあったコーヒーどうした?」
「あぁ、あれ?一つはお父さんが飲んで、もう一つはレン君(彼氏:1話のヌクモト)がさっきうちに来て貰ってったわよ。」

「はぁ????!!!!!」

「何で渡したの!!?あれは、あれは…。」
「何よ、そんな慌てて。うるさいわね。」

私は冷静になろうとしたが、なれなかった。
もしあのコーヒーに何か入っているとしたら確率は2分の1?それとも両方とも?

あっ!お父さん!
「お父さん、コーヒー飲んだよね?」
「あぁ、のんだよ。新作と書いてあったが普通だったな。」
「何か体に異変ない?おかしくない?」
「何を言っているんだ。あるわけないだろう?」


ほっとした。でも、お父さんに何もないならもう一つのほうは…。
慌ててレン君の家へ走った。

そういえば、何でレン君は私の家に来たんだ?何が起きているのかわからない。
私はひたすら走った・・・。


彼の「薬疑惑」の話から始まった私の妄想。このコーヒーは本当に薬が入っているのか、それともただの私のひどい妄想か。それは誰にもわからない。

芳一を除いては…


**********************************

前回の2人の話と繋がっているか、分からなくなってしまいましたが、多分・・・書けたかと・・・。
ミステリー風になりましたが、今後あと2人がどう展開していくのか楽しみです。

「以上、東京からお送りしました。」〜「帝王」と呼ばれるにゃんこのクリスマス編〜

2話の担当李楠です、
ではさっそく始めます。

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「見ろ!人間はゴミのようだ!」

俺は六本木のビルのてっぺんに立って、道中にあふれる人間を見下ろしていて、少し気持ちが悪いのだ。だが、このゴミどもはおもしろい、。悲しい運命ばかりだというのに…俺はこれらのゴミどもは嫌いではない。

「はっ!」

後ろから、子分の声が聞こえた。
俺はこの都市の帝王「芳一」だ。金、権力はすべて簡単に手に入るものだ。だが、俺はつまらないのだ。いま、俺は宿命の男を待っている。

「容器はできたのか?」

そうさ、おもしろいのだ、帝王の俺がこのようなおもしろいことを見失うわけがない。

「はっ、クリスマスのシンクロ率は99.8%です」

「ク!ク!ク!...!」
「この日はやっときた!」
「人間...人間、人間!!!なんと素晴らしい!!!なんと素晴らしいおもちゃだ!!!」





クリスマス当日

「さっそくやれ!!!」

俺は医師、学者、祈祷師などに囲まれている。彼らは、ずっと俺のもとで「魂の術」を研究してきた。

「ご安心ください、芳一さま、すべて計画通りです、それでは...」




・・・
・・・・・・
ベッドに寝ているのは俺だ!
俺は俺の体が見える!

「芳一さま、霊体は不安定なものなので、あまり『容器』から離れないでください、いま、『容器』に同一剤を飲ませます、彼が飲んだら、芳一さまは彼の体に入ってください!!!」

俺の祈祷師は俺に向かって話している。「俺」より、「霊としての俺」のほうがふさわしい。
「同一剤」は缶コーヒーに入っている。俺は平和主義者なのだ、暴力は使いたくない。むしろ、ありふれたものをと思って、「缶コーヒー」に同一剤を入れるよう指示した。誕生ショーをしてやるぞ!

俺の「容器」になる男は、祈祷師によって今日ここでミルクコーヒーを買うことが分かっている。
計画通り「俺のコーヒー」を買わせる。

「お、来た!」

急いで複合商業施設のエレベーターに入った男の姿が現れた。

「おおおおおおおおお!!!!!!早く、早く買え!!!!!」

と思ったら、俺の「容器」は一緒にエレベーターに入った男に話しかけた。二人は知り合いでもないのに、なんで話をするのか!

「あいつはどうでもいいから、早くコーヒーを買え!!!」


「ビ――」

エレベーターのドアが開き、「容器」はまっすぐ自動販売機に足を運んだ。

「ガチャッ!!」ミルクコーヒーを買った。


「へへへへへ、予想通り、さすが俺のアイデアだ!!」

と自慢しているところに、
俺の「容器」は「同一剤」を、話しかけた冴えない男に渡した!

「お、おい!、お前何をするんだよ」
「だれか...」


誰か来てくれるかと思ったら、この冴えない男は知らないうちにひとりで下行のエレベーターに乗った。いったい、なんのためにこのエレベーターに乗ったんだよ!

「パカッ!!!」


男が「同一剤」を開けた!
そして、飲んだ!!!

「ク...おまえ何のために来たんだよ!お前がいまやっていることが俺の何年分の時間を無駄にしたか、わかってんのか!?」

俺がどんどんツッコんでいる間に、彼は「同一剤」を全部飲んだ!

「ク...クソ!!!」





結局、俺の子分は誰も役に立たなかった!!!...
俺はこのまま、この冴えない男と合体するのか!?
いやいや、絶対いやだ!俺は「帝王」の芳一だぞ!

「ク!」

この霊体のまま天国に行くか?!!!
俺は、この世の中でまだ遊びたいことがいっぱいある!
待、待て!体があれば、何とかなるよ!!!

「シャーーーーーーーーーーーーー!!!!!」







...
・・・・・・
俺は意識が戻った!
どうもシンクロ率が低くて、俺の霊体とこの「容器」は合わないようだ、合体に失敗したのか!
いまは夜中じゃないか!俺は夜中しか動けないわけ!!!!!!????

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以上、東京からネコの芳一の話をお送りしました。

急展開ではないが、フィクションの話になってきた!
次はどんな冒険があるのか、楽しみください!

「以上、東京からお送りしました。」〜冴えない男のクリスマス編〜

どうも小山です!リセットしまして1話からの始まりです!ではさっそく!


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「温めますか?」

店員はそれがまるで当たり前かのように、ごく自然に聞いてきた。コンビニで商品を温めるかどうか聞くのはごく普通の光景だが、いかんせん俺が買おうとしているのは週刊誌とカップ麺だ。

「・・・・・。」

俺が押し黙ったままでいると、どうするの?温めないの?といった感じのキョトン顔で見つめてくる。俺は試されているのだろうか?この大学生くらいのバイトの男に。

「えっと・・・あの、どっちを・・・?」

何言ってんだ、よく考えたらどっちにしろどっちも温めねーわと自分の発言にツッコミを入れながらまじまじと店員を観察した。

コイツもいわゆる「負け組」なのだろうか。人はクリスマスに誰と過ごせるかで格が決まる。恋人と過ごすやつ、友達と過ごすやつ、家族と過ごすやつ。こういった類いのやつらは俺にとって格上の存在だ。今年もクリスマスがやってきてしまったが、俺の今日の予定はというと会社の終業時間まで残業である。そして、家に帰って待っているのは誰もいない部屋と、積み重なった家事。だが、目の前にいる、クリスマスにしけた顔で1日バイトしてるこいつと俺とで、負け組としての格は大差ないのではないだろうか。

「・・・・・。」

店員は無言でバーコードを打ち、会計作業が黙々と進む。
ここで、俺はあることが気になった。もし俺が「温めてほしい」と言ったら、店員はどういう対応をするのだろうか。今は俺が試されてる立場だがここで一言「お願いします」といえば一転攻勢である。気になる。温めますかの向こう側の世界が・・・!

「お会計¥500になります。」

「あっ・・・はい。」(チャリンッ)

「レシートのお返しです。ありがとうございました。」

闘いを仕掛ける前に終わってしまった。悔いを残しつつ会社へ戻る。

それから俺は昼食のカップ麺を食べ、ヌクモトのことが気になったまま午後の仕事をダラダラとこなした。あっ、ヌクモトってのは俺があいつに付けたあだ名で、由来は本を温めたがるからヌクモト。






そして、残業を終え、会社から駅へと向かう途中でふと思い立ち、ヌクモトのいるコンビニへと向かった。

(まだアイツはいるだろうか。もしいたらまた雑誌でも買って試してみるか。)

そんなことを思いながら歩みを進めていると、ちょうど例のコンビニからバイト終わりのヌクモトが出てくるのを発見した。俺はヌクモトの後をつけることにした。アイツがこの後どこへ向かい、何をするのかでやつと俺との格の優劣が決まる。

コンビニから5分ほど歩き、どうやらヌクモトは複合商業施設へと向かっているようであった。

(お前はそんなところへ向かうような人間なのか?)
(牛丼屋で飯食って直帰するような『こっち側』の人間じゃないのか?))


そんな不安に追い打ちをかけるように、ヌクモトは複合商業施設の目玉の一つである水族館行きのエレベーターへと乗った。

(これは・・・負け戦・・・?)

と思いながらも、はぐれないようにとっさにエレベーターへ乗り込んだ・・・のは良かったのだが、思いがけずエレベーター内で二人きりになってしまった。

「・・・・・。」

おそらく俺だけが一方的に緊張感に包まれていた。もしやつが俺のことを覚えていて、ここまでつけてきたことがバレたとしたら、俺は完全に変態認定されてしまう。そのとき、


ガタンッ!!

大きな揺れとともにエレベーターが止まった。どうやら地震があったようである。非常時を告げるアナウンスによるとエレベーターが動き出すまでに時間を要するという。


「困りましたねぇ」

ヌクモトが話しかけてきた。

「待ち合わせですか?僕も上で彼女と待ち合わせしてるんですが、しばらく動かないとなると待たせちゃいますよねぇ・・・。どうしたものか。」

コンビニでのバイト中と打って変わってヌクモトは気さくで明るい青年であった。そして、やつと俺との格付けバトルの勝敗を決定付ける残酷な言葉が静かに発せられていた。圧倒的敗北だった。
しかもやつは俺を「負け組」と決めつけていなかった。むしろ同じ、「クリスマスに予定ある側の人間」なのだという前提で話しかけてくれた。そんなヌクモトの優しさが、俺の悔しさを、さらに加速させた。



それはそうと、止まってから数分、暖房機器も止まったエレベーター内は12月の外の気温と同じくらいまで下がっていた。俺が少し身体をかがめて寒そうにしていると、ヌクモトがおもむろに口を開いて言った。

「あ、その雑誌・・・。温めておけばよかったですね。」

ニッコリとした笑顔とともに発せられたその言葉の殺傷力。次に言われる言葉はなんだろうか。「なんでここにいるんですか」、なんて言われた日には、俺は変態紳士としての道を歩んでいくしかないのだろうか。

「お兄さん今日ボクのバイト先で雑誌買っていった人ですよね?」

死刑執行を待つ囚人のようにビクビクとしながら次の言葉を待つ。

「・・・実はですね、お兄さん、すごく人生疲れた顔してたから。ちょっと冗談言って笑わせてあげようかなと思ったんですよ。」

穏やかな笑顔でヌクモトは言う、

「そしたらお兄さん、どっちをですかなんて真に受けた答えするからこっちが笑いこらえるの必死でした。」

彼から発せられた言葉の内容と、あのときの行動の真意はとても意外なものだった。

(なんだこいつ・・・ただのイケメンかよ・・・///)



そして、止まってから5分ほど経ったところでようやくエレベーターが動き始めた。

「いやぁ、意外と早く動いてよかったですね。」

水族館のエントランスの階までエレベーターが到着しドアが開いた。

「お先にどうぞ。」

ヌクモトはどこまでも紳士だった。

そして、彼はエレベーターを降りるなり、すぐ横にあった自動販売機に向かっていった。

「あの、これよかったら」

と言いながらヌクモトは缶コーヒーを差し出してきた。

「これで温まってください。」
「それじゃ彼女待たせてるので失礼します。」

惚れた。
これがリア充の余裕なのだろうか。大学生くらいの青年がこんな社畜リーマンに気遣いしてくれるなんて。ゆとり教育バンザイである。

「・・・帰るか。」

そうつぶやき、俺はエレベーターに乗り、駅へと向かった。









今年の俺のクリスマスは、ヌクモトという青年に心を奪われている間に終わってしまった。不思議と惨めさや悔しさ、世のリア充に対する殺意の感情もなかった。残ったのは、アイツの邪気のないただ純粋なる人への優しさと、缶コーヒーの温もりだけだった。




以上、東京から冴えない男の話をお送りしました。


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さて、タイトル的に「物語の舞台は東京」、「〜編」が5話、という縛りを設けてしまいましたが、今後どうなっていくのでしょうか。それぞれの物語がどう繋がるのか、急展開を迎えるのか、群像劇になるのか、などなど、、、残り4話!楽しみです!

「ももたろさん」第四回

「ももたろさん」最終走者塚田です。
季節の変わり目に風邪をひきまして、その間にブログのお題がリレー小説になっていて、いつにもまして頭を悩ませました…。

あ、でも、いつも頼りないゼミ長が、どうやら、休んでいた私がリレー小説トップバッターになりそうなのを代わってくれたらしく、少し見直しましたね!!

さて、そんなゼミ長から始まった「ももたろさん」。
ホラーですよね…。
私、ホラー大っ嫌いなので、ホラー映画もホラー小説もホラー漫画も読まないんですけど、正直今までのゼミ生の創作能力が高すぎて普通に怖くて涙目です。

今のところ、はっきりとしたことが何もわかってませんが、何とか終わらせたいと思います。

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「岡山さん!これ岡山さんにって、上から!」

「桃太郎事件…?」

「そう!最近噂の怪奇事件ですよ…!知りません…?男女の若い四人組が病院に運ばれたやつ…」

「あー、あれ事件性ないって話じゃ?」

「それがわからないから調査しろってことらしいですよ…!」

「え、」

そう言い終ると、同期の島浦は未解決怪奇事件を押し付けて去っていった。


「あいつ…」

どう考えても当てつけだ。





こういった事件は、だいたい調査しても未解決で終わるのだ。
ポイントにならない、ただの時間の浪費だ。
警部になってから今年二年目になる。
出世欲が強いわけではないのだが、無駄なことが嫌いな性格が幸いしてか、同期よりも少し早く出世でき今に至る。



押し付けられた書類を手に部屋に戻ると、犬山が眠そうに近づいてきた。

「どこいってたんすかー。」

「散歩だよ、散歩。」

若干いらっとしながら答えたものの、いいことを思いついた。
うちには、動物がたくさんいるじゃないか。

「犬山ー。門橋ー。武田ー。お前らこれ調べろ。よろしく。」


「えっなんすかこれ!桃太郎事件?」
「最近噂の怪奇事件ですね。」
「なんで俺らが…」


デタラメに選んだわけではない。ちゃんとチームワークを考えた結果でもある。
それに、被害者とされるその四人に話を聞いて、現場とされる場所に行って報告書を書けばいいだけに終わるだろう。


「まあよろしく。」











「モンキーこれってどういうこと―?説明して―!!」

「では、報告書の内容を確認のために今一度私から説明させていただきますね。」

モンキーとよばれている彼の名前は、カドバシ キョウヤというのだが、
出会って早々犬山に、もんきょうと読み間違えられたことがきっかけで、以降やはり犬山が呼び出したモンキーというあだ名が定着してしまっている。
堅物と言われる、いわゆる真面目野郎だ。

「大橋美香子、深山佐奈、高橋洋介、宮崎文太の四名が岡山県の美咲町で錯乱状態で発見されました。かろうじて、意識を保っていた深山佐奈が近くの交番に駆け込んだことで、捜索が開始し、まず倒れている高橋洋介を発見、そこから300メートルほど離れたところで、同じく倒れている大橋美香子を発見。宮崎文太は二人とはかなり離れた場所で、木にぶつかった事故車の中で発見。深山佐奈は交番で「ももたろさんののろい」としきりにつぶやいていたそうです。すべてにおいて謎めいていますが、特におかしなところが深山佐奈以外、なぜか三人とも顔の上半分が赤くなっており、まるで桃のようになっていたということです。その後、病院で手当てを受けた深山佐奈によると、お盆に高校時代の仲間である四人で、桃太郎伝説発祥の地に車で出かけたということのようです。」

「こわ!!!!えっめっちゃこわ!!」
「怖いな。」
「けーーーん!そんな淡泊に言われても全然怖がってるように見えないよ!!」
「それにしても桃太郎伝説って。」
「もーもたろさんっももたろさんっおっこしにつけたーっきーびだんごーってやつでしょ?」
「鬼退治するやつ。」
「オカルトだっけ?」


深山佐奈の話には、オカルト番組で見た桃太郎伝説発祥の地が特集されていたとあった。もちろん彼らの知っている桃太郎は決してオカルトチックのものではなかった。


「まずはそのオカルト番組を見る必要がありそうですね。」

門橋はそういうと事件に巻き込まれたとされる四人の状態を確認しに行くことを二人に任せ、自分はそのオカルト特集のデータを探しに行くと言って出ていった。


犬山 一(いぬやま はじめ)と武田 健(たけだ けん)、門橋 恭也の三人は同期なのだが、大体門橋・犬山 武田で行動することが多く、仲が悪いわけではないのだが、なんでだかこのフォーメーションが定着している。



「看護師さーん!僕たち警察なんですけどぉー」


病院につくと、さっそく犬山がその辺にいた看護婦に声をかけた。
犬山のあまりにも軽いノリのせいで最初は警戒されたものの、何とか担当医に案内してもらうことができた。



「深山さんはもう意識もはっきりしているのですが、一応大事を取ってまだ入院してもらっています。こちらが深山さんのお部屋です。」

案内された部屋に二人が入ると、ベッドに上体を起こし窓の方を向いた状態で、深山佐奈が座っていた。


「はじめまして。岡山県警の者です。
こんなときに、申し訳ないですがお話を聞かせていただけますでしょうか。」

「……はい。」

武田の挨拶でこちらを向いた深山佐奈は、ひどく力ない声で答えた。


「いきなりですが、あなた深山佐奈さんと、大橋美香子さん高橋洋介さん宮崎文太さんは高校時代の友人でお盆休みに、桃太郎伝説発祥の地に遊びに出掛けたということでよろしいですか?」

「…はい。」

武田がそう切り出すと、犬山はそんなぶっきらぼうに!!と文句を言ったが武田は無視して質問を続けた。

「なぜ桃太郎伝説発祥の地に行こうと…?」

「ずっと四人で遊びに行こうと思っていて、そんな時テレビで桃太郎伝説の特集番組を見たんです。」

「なるほど。で、車に乗って美咲町にむかったと。」

「…はい。」

「みなさんばらばらに発見されたとお聞きしましたが、そこまでの経緯を教えていただけませんか?」

「もうすぐ到着するって時に、みんなお昼ご飯を買い忘れたことに気が付いて…近くにコンビニもなかったんで困ってたら…ヨースケがお団子を配ったんです…。ヨースケのお母さんが送ってきたものだそうで。でも私…お団子がすきではなくて…食べなかったんです…。そうしてるうちにだんだん霧が濃くなって、このへんかなぁって言ってたんですけどなかなか到着しなくて…。お団子を食べなかったせいで私もおなかがすいて耐えられなくなってきて、皆でもう戻ろうかってなったんです…でもカーナビも壊れちゃってて、電波も届かなくて…。そしたらヨースケが、ちょっと歩いてみてくるって…車を降りて…そしたら美香子も危ないからって後を追って霧の中に消えちゃったんです…。それでまっててもずっと帰ってこなくて…だんだん不安になって…私も車を降りて二人を探しに行ったんです。そしたら…しばらくしてものすごい音がして…心配になってザッキーの方に戻ったらザッキーもいなくなってて…こわくなって走って走ってやっと交番を見つけたんです…あとは気を失って気づいたら病院にいました…」

深山佐奈の話は、ほとんど報告書通りで食い違う点もなかった。しかし念のためと武田がさらに質問をしようとしたところ、犬山が「かわいそうじゃん!」と止めたので、武田もこれまでと思い、大橋美香子の様子を見に行くことにした。

「大橋さんは未だ錯乱状態でして、高橋さんよりはましなのですが、刺激しないようにお願いします。」

そう言って案内された大橋美香子の病室の扉を開けると、扉の方を向き手にタオルをもった大橋美香子が立っており、顔は上半分が赤く、下半分が白く、本当に桃のようだった。
そしてなにかわけのわからないことを叫びだし、こちらにタオルを投げつけたとおもったら、カーテンの裏に隠れひどくおびえているようだった。


「大橋さんはああなるたびに鎮静剤を打ち、寝て、また起きるとふらっとタオルをもって顔を洗いに行こうとするんです。そして、洗面台の鏡を見て自分の顔に驚いて発狂するということをずっと繰り返している状態です。何かずっと幻影を見ているようで、病室を家だと思い込んでいるようなのです。」


あまりにもひどい状態で、犬山も武田もとうとう桃太郎伝説の怪奇さを実感せざるをえなかった。


医者の話によると、宮崎文太は事故の影響で未だ目覚めておらず、高橋洋介は大橋美香子よりひどい錯乱状態の為、面会謝絶状態だという。

「あの顔の赤みは何が原因なんでしょうか…」


武田が聞くと、医者はまったくもってわからないと首を横に振ったが、何かのアレルギー反応のように見えるので、一週間もすれば赤みは引くのではないかと話していた。



謎めきすぎている事件に、武田も犬山も特に会話をせずに署に戻った。







「何かわかりましたか?」

部屋に入ると門橋はパソコンから目を離さずに、尋ねた。

「報告書通り。」

いつもと同じようにぶっきらっぼうに武田が答えると、犬山が思い出したように言った。

「関係ないと思うけどさーお団子食べたんだって。皆で。なーんか桃太郎だからきびだんごみたいだね!」

門橋は興味なさげに犬山を一瞥した。

「オカルト特集桃太郎伝説のデータが手に入ったので見てみましたが、少し面白いことが分かりました。いわゆる桃太郎の裏話というやつですかね。
桃太郎が鬼退治をした話ですが、鬼というのは村の近くに住む山賊のことで、村の少年が動物達を使ってそれを倒したことが桃太郎伝説の始まりだそうです。それだとあまりオカルトではありませんが、桃太郎が実は精神異常者だったという話です。鬼を倒した後も桃太郎は気が狂ったままで、顔が上半分が赤く下半分は白く、まるで桃のような色になり、とうとう最後には困り果てた村人に殺されました。しかし、その後同じように、顔が桃のようになり気が狂う若者が、村の中で増え、それが怖くなった村人はどんどん村を抜け、今では人の住まない森となったようです。その森が今回の事件現場ということですね。」

顔が桃のように…。実際にそれを見てきた犬山と武田はだいぶ青ざめていたのだが、門橋の次の言葉を止めることはできなかった。

「では、事件現場に向かいましょうか。」










三人で現場とされる場所に着くと、あたりは霧で包まれていて5m先が見えるかどうかだった。
通常三人で行動するのは珍しいのだが、怖がった犬山がどうしてもとインドア派の門橋を無理やり連れてきたのである。

「何も見えない…」

犬山が震える声でつぶやく中、さっさと終わらせたいとばかりに武田と門橋が車を降り、大橋美香子、高橋洋介が向かったとされる方向に足を進めていた。

「けーん!早いよ!!モンキーもおいてかないでッ!!」



車を降りてから十分くらい歩いたところで、小屋が見えてきた。
近づいてみると、築何年だろうかというレベルのボロ小屋だった。

「人は住んでなさそうだけど…」

犬山がそうつぶやいたとき小屋の中から音がした。
はっと見ると窓に人影が見えた。
武田と門橋がとっさにはしって扉の方へ向かった。
犬山もあわてて二人の後を追いかけると、武田と門橋が開けた扉の先には老人がいた。
老人はいきなり開けられた扉に驚いている様子だったが、しばらくして

「何も触るな!!」

と声を荒げた。

「あなたはここで何をしているのですか。」

門橋が聞くと、勝手に入ってきて何を失礼なという顔しながら老人は答えた。

「実験だ。」







老人の正体は、創薬研究者だった。
創薬研究者つまり、薬を開発する仕事だ。
そんな人がなぜここに。

「これだよ。」

そういって老人が差し出したのは、一束の草だった。
しかしそこから、甘い香りが漂っていて、車を降りた時からしていた匂いはこれだったのかと三人はさとった。

「この草はここにしか生えていない草で名前はない。私は桃の香りがするのでモモクサと呼んでいる。」

老人は、モモクサとそれを研究するに至る経緯を話し始めた。

「この近くには昔、といっても40年ほど前だが、一つの村があった。村人は少なかったが、かなり昔から細々と存在していた村だった。しかし、そこである事件が起きた。若者が次々と気が狂い暴走を始めたのだ。中には死ぬものもあらわれ、村人は危険を感じ村から去っていった。その時、何人もの村人が口にしていた言葉というのが「ももたろうの呪い」だった。その村には、昔から桃太郎伝説という言い伝えがあり、それは君たちも知っている通り鬼退治をした少年の話のもととなったものだ。それというのは、昔村には定期的に山賊がやってきていて、武力で村のものを勝手に奪い村人も困っていた。そんな中、ある少年はある草を食べると一時的に自分の力とは思えない力を発揮できることに気が付いた。少年はこれなら村を救えるかもしれないと、山賊退治を決意した。そして、その草を練りこんで団子にしたものを母親に作ってもらい、山賊退治に向かったのだ。途中、猿やキジ、イヌといった動物を少年は団子を餌に従え、山賊の住むこの土地へとやってきたのだ。その日は、今日のように気温も低く霧が出ているときだった。そして少年は、団子を食べ山賊を無事倒すことに成功した。しかし、少年は、なぜか錯乱状態になり、今度は村に戻り村人を襲った。生き残った村人たちは、錯乱状態で顔の上半分が赤く、下半分が白くなった少年を見て、鬼に取りつかれたのだと思い、少年を殺すしかなかった。そこから、少年の弔いの為に、その草を練りこんだ団子には不思議な力があるとされ、祝い事や儀式のたびにその団子は作られるようになった。」

そこまで一気に話すと老人は、話しながら淹れてくれたお茶を三人に勧めた。

「大丈夫。これはただの緑茶だ。」

「あなたは村人の方だったんですか。」

そう門橋が聞くと、老人は首をふった。

「村から逃げてきた村人に聞いたのだ。ここまで来て頭のいいやつには分かるかもしれないが、その伝説に出てきた草というのがこのモモクサ。そしてこれには、」

「覚せい剤や、麻薬のような効果があるということですね。」


すかさず門橋が言った。

「えっでも村でずっとお団子が作られてたんなら、なんで村人は皆その少年のようにならなかったわけ?」

「私はそれを研究しているのだ。そこで最近分かったのが、この土地の気候だ。草は村があった場所にもこの山賊のいた土地にも生えているが、ここのように草の匂いが充満しているのはここだけだ。つまり、団子を食べたうえで、この土地でしか発生しない草の成分を吸うと、おそらく効果が倍増され錯乱状態に陥るのだ。」

「なるほど…つまり…これでなぞは解けた…ということですね。」


そう門橋はいうなり「ありがとうございました」と老人に頭を下げて帰ろうとした。

「ちょっとまていっっ」

今までがくがく震えていた犬山が、がくがく震えながら門橋を止めた。

「いやいやいや!かえっちゃだめでしょ!!おじさん!その錯乱状態になった人って治らないの⁉」

「治せないこともないが…」

門橋も我々がそこまでする必要が?とぶつくさ言いながらも、

「この間、若者男女四人がその少年と同じような状態を起こしまして、」

と、老人にことのあらましを話したところ、老人ははっとしたような顔で、おそらく高橋洋介であろう男性が小屋に来て老人を見るなり、絶叫して出ていったという。

「その時点ですでに錯乱状態だったということですね。」
「車にはあと一人乗れる。」
「病院へ急ごう!」











「これで大丈夫だ。じき薬の毒は抜けるだろう。」

「ありがとうございます!」

お礼を言っていたのは犬山だけだったが、医者も原因不明のものが明らかになってよかったというようだった。
そして、そこに病院から連絡を受けた、高橋洋介と大橋美香子の両親もちょうど到着し、息子や娘の落ち着いた寝顔をみて安堵した様子だった。
すべて解決したかのように見えたが、門橋だけはそもそもの原因となったきびだんごのことを忘れてはいなかった。

「高橋さんのご両親ですよね。お聞きしたいことがあるのですが。」

両親に今回の全容を改めて伝えると、高橋の母親は目を大きく見開いて驚いていた。
何せ、その原因のきびだんごを作ったのは自分なのだから当然だろう。
しかし、少し沈黙した後で、こう答えた。

「私の祖母がその土地の出身だったと思います。うちには、代々伝わる薬草が庭にはありまして、祖母が生まれた土地からもってきたもので、栄養がたっぷりあるのだと言っていました。だからうちには、その草を練りこんだ団子を何かしらあると持たせる習慣があるんです。洋介が五歳の時に、祖母が亡くなり、それを機にその時住んでいた家を手放してしまって、草ももう今の家にはないのですが、ついこの間、前の家を出るときに切り取って乾燥させておいたものが出てきまして、一人暮らしをしている息子にと団子にして送りました。でもまさかそれが原因だなんて………
本当にご迷惑をおかけしました。」







「岡山警部!桃太郎事件解決しました!!」
「報告書ここに置いてきます。」
「事件じゃなくて事故だったけど。」




















数日後


「ヨースケ。私、思い出したの。私が小さいころに会った男の子ってヨースケだったんだね…。二人なのに鬼ごっこして遊んだよね。楽しかったな…。お母さんから聞いたよ。ずっと私のこと覚えてたって。なんで、言ってくれなかったの…?」

「だって、俺の初恋だったから…忘れられてたらと思うと、言えなかったんだ。」

「またねって言ったのにあれから会えなかったし…。」

「あの日にひいばあちゃんがなくなって、しばらくいけなかったんだ。あの公園にある桃の木の香りはひいばあちゃんが大好きだったから。」

「そうだったんだ…。でも、また会えてよかった。」













おわり

「ももたろさん」第三回

こんにちは。井上のなっちゃんからバトンを渡されました、第3走者の長村です。

もう正直5期生の文才が発揮されすぎて、そしてもう話をどう進めたらいいかわからず
ほんっっっっとに大変でした(T_T)

第3話のはじまりはじまり~~ですっ。



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どれくらい気を失っていたのだろう。

美香子はゆっくりと目を開けた。

すごく薄気味悪い夢を見た気がする。いや夢だろうか。
夢にしてはリアルすぎるのだ。あの光景も甘い懐かしい匂いも最後に触れたヨウスケの腕の感触も全てはっきり覚えている。
美香子は、本能的にこれは夢なんかではないと悟っていた。だとしたら、とんでもなく恐ろしいことに自分は巻き込まれている気がする。




「・・・っつ。」あまりの頭の痛さに意識が遠のきそうになる。頭が割れるように痛い。動悸がする。胸が苦しい。息もしづらい。美香子はゼイゼイと息を切らしながらも意識をなくすまいと懸命に耐えた。ここでまた気を失ったらもう二度とこの世に戻って来られない、そんな予感がした。




意識を朦朧とさせながらも、美香子は自分が意識を失うまでの記憶をたどっていた。そうしなければならないという想いに駆られていたのだ。
特に桃太郎伝説発祥の地に行った時に起こったことを思い出さなくては。


白い霧に囲まれひんやりとした空気に包まれた車内。
佐奈から車はずっと走り続けているにもかかわらず、カーナビの位置情報が一向に変わらないことを聞かされた。その時の佐奈の顔色が心なしか青白く、目が不安げに泳いでいたことも覚えている。
ヨウスケが電波が悪く道も調べられないからと言って車から飛び降りて・・・



何かが「切れた」




でも何が?私の記憶?すごく大切なことなはずなのに思い出せない。思い出そうとすればするほど頭の痛みはますますひどくなる。





ヨウスケを追って私も車から飛び降りた。ヨウスケが白い霧の中に消えていってしまうように感じて、というより白い霧にさらわれてしまうような気がして、慌てて飛び出したのだった。




それだけじゃない。「匂い」だ。匂いに誘われるようにして思わず外に出てしまったというのも事実だ。甘くて懐かしい匂い。私はこの匂いを知っている。

この匂いはおそらく桃だ。

私にとって思い出深い匂い。
桃の木の下で木陰に並んで座る男の子と私。いろいろなことを話して遊んだ。
集合場所はいつも桃の木の下だった。
学校も違う、男の子のことは名前しか知らない、なのにありのままの自分でいられた。
男の子といっしょにいられるだけで心が浮き立った。あの時は幼すぎて気づいていなかったが、私の初恋の思い出だ。





男の子の名前はなんだっけ?思い出せない。でも突然いなくなってしまったのだ。
最後に交わした会話はたしか・・・
「ねえ、美香子ちゃん。桃太郎伝説って知ってる?」
「桃太郎?知ってる~!鬼退治に行くやつだよね?」
あのとき男の子は否定も肯定もせず悲しそうに微笑んで「またね。」と言ったのだ。





こんなことがなければ思い出さなかったであろう記憶が蘇り、美香子は背筋が凍るようだった。
あの時の桃太郎伝説は今回のことに繋がっている。
「またね。」と言ったということは私は初恋の男の子に会っているということだろうか。あの男の子はいったい何者で、桃太郎伝説とは何なのだ。





そこで美香子の記憶は「切れた」・・・。





はっと我に返り、とても恐ろしくなった。コドモの頃から美香子が桃太郎伝説に関わることは運命づけられていたのだろうか。だとしたらこの恐ろしいことの元凶は美香子自身だ。
ヨウスケは、佐奈は、ザッキーは無事なのか。悪い想像しかできないが、今は可能な限りあの日起こったことを思い出すことが先決だ。そうすることでみんなを救えると美香子は感じ始めていた。





そうだ、ヨウスケを追って小さな小屋を見つけた。ヨウスケが小屋の中に入っていった。そこからだ、ヨウスケがおかしくなったのは。
ヨウスケの叫び声が聞こえて、勢いよく飛び出してきたヨウスケはまるで何かに取りつかれているかのようだった。ヨウスケがヨウスケではないように感じた。


ヨウスケの腕を掴んだ瞬間、霧が一気に濃くなり強い風で目の前が見えなくなった。そのときもまたあの桃の匂いがしたのだ。
そのときヨウスケの姿と初恋の男の子の姿が重なって見えた。
匂いのせいだろうか、
それともヨウスケはオトナになったあの男の子なのだろうか。
だとしたらヨウスケでないように感じたあの薄気味悪さはいったい何なのだ。もう何もわからない。何を誰を信じればいいのだ。




美香子は泣き叫びたい衝動を必死に抑えた。というより声が出なかったという方が正しい。
ん?声が出ない?そうだ、気を失う前、舌も回らなくなって・・・顔を洗ってすっきりさせようとして鏡で自分の姿を見て・・・。
ということは鏡を見ればなにかわかるかもしれない、そう思いつき美香子は洗面所へ向かおうと腰をあげた。





そのとき玄関のインターホンが「ピンポーン」となった。
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お次は塚田のにーなさんです。にーなならバシッとしめてくれることでしょう。お楽しみに(@^^)/~~~