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「大人の階段」−転がり落ちた先には−

こんにちは!小知和です。
さて、このリレー小説ももう最終話の第4回、ゴールも目前です!
では早速。

---

「おあしもとにきをつけてくださいね!」

女の子に促されるままにやたらとポップな看板の向こう側へと足を踏み入れると、大人ひとりがやっと通れるくらいの階段が姿を現した。壁から天井までどギツいピンクで塗られているけど、ところどころペンキが剥がれて白い部分が剥き出しになっている。下の方を覗いてみても、暗くてよく見えなかった。電気のひとつもないみたいだ。

流れに身を任せてここまで来てしまったけれど、“大人の階段”なんて、どう考えても怪しいよなぁ…。階段を降りる直前ですこし立ちすくむ。その時の私の中には、先に先生が入っているという安心感と、怖いもの見たさの好奇心が半分ずつあった。もしかしたら、後者の方が大きかったかもしれない。

「よし。」

階段は狭く薄暗くて足元がよく見えないので、目を凝らしてゆっくりと降りていった。

しばらく降りていくとぼわっとした光が現れた。近づいてみると、そこにはカウンターがあって、先程のおかっぱ頭の女の子と瓜二つの、これまたおかっぱ頭に和装の小さな女の子が立っていた。双子なのかな…?それにしても、その姿は壁のピンクにはどう見ても不釣り合いだ。ここのオーナーの趣味なのだろうか。そもそもここはお店なのか、何なのか…。

「ようこそ、“大人の階段”へ!おまちしておりました!」

「あれ、もしかして、今私が降りてきたのが“大人の階段”?と、すると…あなたが“おミヤさま”…?」

「むむ、ちがいますよー。ここは“大人の階段”へのいりぐちで、わたしはただの あんないにん です。おねえさんにはこれからもういちど、かいだんをくだって、“おミヤさま”にあってもらいます!でも、そのまえに、この“しょーだくしょ”にサインしてくださいね!」

「しょ、しょーだくしょ…?」

差し出された紙にはこう書いてあった。


しょーだくしょ

 ぼく・わたしはなにがあってもおこりません

ねん がつ にち
なまえ:            



…なんてふざけた「承諾書」なんだ。「僕・私は何があっても怒りません」…平仮名ばかりで読みづらいけど、きっとこうだろう。

「“おミヤさま”は、おねえさんを、おねえさんのゆめにみちびいてくれたり…みちびいてくれなかったりします。」

「…え、ええ?!どういうこと?!」

そんなバカな。怒りませんって言ったって、誰に対して怒るって言うんだ。だいたいこんな怪しい場所で、こんな適当な“しょーだくしょ”、こんな適当なシステム…一体、誰のイタズラなんだろうか。先生は、この“しょーだくしょ”にサインしたのかな。してなかったら、きっと出てきて、すれ違っているはずだ。せっかく降りたこの階段をもう一度上って帰るのもめんどくさいし、さっさと進んで先生に会って、ワケがわからないこの状況を共有したい。私は、少し投げやりになりながら女の子が差し出したペンを受け取って、「しょーだくしょ」にサインをした。

「ありがとうございます!では、おまたせいたしました。”大人の階段”はこちらです。」

女の子は私をカウンターの向こう側に案内すると、カーテンの前に私を立たせた。女の子がカーテンを勢いよく開けると、そこにはさらに地下へと下る階段が続いていた。ま、まだ階段か…

「さあ、いってらっしゃい!」

その瞬間。

ドンッ

「あーあ、あしもとにきをつけてって、いったのに…。」




女の子の声が遠くに聞こえた。一体何が起こったんだ。階段の前に立ったところで急に強い力で背中を押されて、私は階段を転がり落ちてしまっている。なぜだかうまく止まれない。それどころかスピードは増すばかりだ。すでに複雑骨折していてもおかしくないくらいだけど、不思議と体は痛くない。しかし、どこまで転がっていくんだろう。帰りはエレベーターがあるのかなぁ、最近は階段の上り下りがつらいんだよなぁ。先生と出会った13年前、高校生の頃はそんなこと思わなかったのに。そういえば、先生が奥さんと結婚したのが30歳だって聞いた。私も、高校生の頃は友達と一緒に28までには子供欲しい!なんて語り合ってたっけ…


「“おミヤさま”は、みなさんのゆめにみちびいてくれるんですよ!」


最初に会った女の子の言葉を思い出した。真っ暗闇の中を転がり続けるなかで、私はだんだん“大人の階段”に、なんとなく期待を膨らませていた。もしも、もしも私の夢が叶うなら…
お願いします。おミヤさま。私に、私に素敵な彼氏を!!そして、寂しくないクリスマスを…


ゴンッ ズテンッ


そうこう考えているうちに、何かにぶつかったらしく、私はようやく止まることができた。音は派手でマヌケだったけど、やっぱり体は痛くない。真っ暗闇から急に明るいところへ出たみたいで、目がチカチカする。

目が慣れたところでぶつかった先を見上げると、そこには石で造られた人型の…いわゆる地蔵みたいなものが立っていた。少し見上げる高さなので、170cmくらいはありそうだ。短髪で好青年っぽい表情をしていて、人間でいうと20代…いや、30代くらいだろうか。それにしても上から「ニューシャネル」と書かれたTシャツが着せてあるなんて、サブカルっぽい雰囲気の地蔵だなぁ。これもオーナーの趣味だろうか…。

「誰がサブカルなん」

「えっ?!わっ、しゃべった?!」

び…びっくりした。急に目の前のサブカル地蔵がしゃべりだすなんて。その口の動きのなめらかさはとても石造とは思えなかった。っていうか、あれ、私さっきサブカルっぽいって口に出してたっけ?

「地蔵やないって。おミヤさま。おミヤさまは神様なので、あなたの考えてることはせーんぶ分かるんですよ。」

ええっこれがおミヤさま?なんだか想像と違う…!神様とか言って、やたらとフランクだし。関西弁だし。地蔵だし。

「だから地蔵やないって…ま、いいや。えーっと…矢吹…典子サン?あ、さっき来た人の元教え子なんやねー。」

「あっ…先生は、大槻先生はどこにいるんですか?」

「大槻サンはね、もう夢に導いたから。ここには居らんけど、ま、矢吹サンも、これから夢に導くんで。早速やけど矢吹さんの夢って何なん?」

ごくん、と私は唾を飲み込んだ。地蔵とはいえ、初対面の人…いや地蔵に、彼氏が欲しいと頼むなんて、なんだか傲慢で恥ずかしいけれど。これが本当なら、5日後には、3年越しのハッピーメリークリスマスだ!もう一人でバラエティ番組を見ながら過ごすことも、イルミネーションを観に行くことも…クリスマスの前後しばらく、友達がSNSにあげる彼氏の存在をにおわせる写真を見て落ち込むこともなくなるんだ。地蔵相手に恥ずかしいなんて言ってる場合じゃない!

「私…か、彼氏がほしいです!」



「ぷっ」

「え、ええっ」

この地蔵、今噴き出したでしょ。人が恥を忍んでお願いしたのに!まったく、バカにしてんのか。

「いやー、ごめんごめん。ここに来るまでにさ、あの長い列見たやろ。だいたいさ、ここにくるのは20〜40代くらいの比較的若い人たちなわけですよ。その5割か6割くらいが恋人が欲しいって言うんよね。みんな真剣な顔してさ、こんな石像相手に。クリスマス前だからってみんな焦りすぎとちゃう?って気もするんですけどね。ま、いいや。矢吹サンはさ、今まで散々失敗してるみたいやん?ぷぷぷ。」

な、なんだこいつ!あんな長い列に並んで、意味がわからない承諾書にサインまでして、恥を忍んでこんな失礼なサブカル地蔵に彼氏が欲しいなんて…期待した私がバカだった!

「ちょっとアンタ、さっきから黙って聞いてれば…!」

「はいはいはい。さっき“しょーだくしょ”に怒らないってサインしたやん?」

「そ、それは…………。」

たしかに、今までの彼氏は散々だった。散々だったけど…

「とにかく、クリスマスくらいは一人で過ごしたくないのよ。」

「ふーん。じゃ、後ろも詰まってるんで、そろそろ夢に導くとしますー。お疲れ様でしたー。ちちんぷいぷいほーい」

“おミヤさま”がふざけた呪文を唱えると、景色がだんだんぼやけて“おミヤさま”も見えなくなってしまった。意識も遠くなっていき、気がついた時には…

「あれ…ここは?」


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ここで、アンカーの高橋君にバトンタッチです!
果たして、典子の夢は叶うんでしょうか?
最後までよろしくお願いします!
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