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「あなたが落としたのは、」ep.4 冬

石垣華です。

無事に明大祭も終了しました!
90年代をテーマにした「喫茶 時をかけるゆとり〜90年代で待ってる〜」、内装にとてもこだわり、懐かしいゲームもでき、とても好評でした!場所が校舎の4階、裏側ということもあり、なかなかそこまで来てもらうことは大変でしたが、来てくださった方々ありがとうございました!

そして宮本ゼミの皆さん、お疲れさまでした。

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さて、「あなたが落としたのは、」いよいよ最終話はじまります!





僕は気づけばただ走っているだけになっていた。
時間を気にした僕は右手に付けた腕時計を見た。

19時まであと20分・・・
次の電車に間に合わなければ遅刻だ。
今日はクリスマスイブ。
僕は自分の会社が主権した会社のイルミネーションのイベントに立ち合わなければならなくなった。
上司は「お前はよく頑張っているから、今日くらい無理に手伝わなくてもいい。」と言ってはくれていたが、今まで頼まれた仕事は断ったことがなかったし、流石にクリスマスのイベントだから人出も足りていないはず・・・。やっぱり向かうべきだ。

僕は雪道を走り続ける。寒さで息が苦しい。

焦りがこみ上げてくるとともに、走る足を止めたくなる気持ちが邪魔をしてくる。

僕はどうしたいんだ!!!

イライラする・・・。

雪で足場が悪くなっていることを忘れていた僕はイライラでつい足に力が入りすぎてしまい、また転んだ。

ドテッ!!・・・
僕は仰向けに倒れたらしい。

はぁ。

全身が痛い。

なんだかすごく疲れた気がした。僕はなんでこんなに必死になっているんだ?
ずきんを被った女の子達・・・

見せられる景色は全てヒカリとの記憶だ。わけがわからないけどどれも楽しかった思い出でまるで夢を見ているような、なんだか気持ちの良い記憶ばかりだ。

僕はそっと目を開け、目に飛び込んできた景色に思わず息をのんだ。

そこには何にも邪魔されない、真っ白な空と顔に降り注ぐたくさんのボタン雪。

「これと同じ景色、前にも見たことがあったなぁ。」

「んふふ、そうだよ〜。ヒカル、覚えてるかな?」

後ろでまたヒカリの声がして僕は振り向く。

「なんでヒカリの声が?」

「流石にもう4回目ともなれば驚かないか〜!私はヒカリの想いを運ぶ雪の妖精だよ!」

「ヒカリの想いって?それどういう…」

「ほらほら!雪が奇麗だよ〜。」

月の明かりで照らされたボタン雪の結晶一つ一つが宝石のように輝いていた。

「そうだ!僕はヒカリとこの景色を見たことがある。3年前のクリスマスだったような…」
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ヒカリ、寒くない?」

「平気だよ。」

「ごめん、僕が遅れたせいでイルミネーションあんまり見れなかったね。」

「ううん。
 それより見てよ!イルミネーションより奇麗だよ。」

ヒカリが指を指す方向に目線を移す。

「綺麗だな・・・。」

「イルミネーションもいいけど、このタイミングで雪見れたことのほうが嬉しいよ!」

「ヒカリに一つ、約束したいことがあって・・・。」

「なに?」

「ヒカリとずっと一緒にいたくて・・・大人になってお互い会える時間が減っても、二人の思い出だけはずっとまもっ、るよ!」

声が裏返った自分が恥ずかしい・・・。顔を雪に埋めてしまいたい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あなたが落としたのは・・・」

一瞬にして、今日出会った3人のずきんを被った女の子達が僕の頭をよぎる。

春はお花見、夏は花火を見ににも行った。そして秋には銀杏並木、冬はイルミネーション


「僕は・・・。」
心臓が速くなるのが分かる。外の寒さが分からなくなるほど顔も熱くなる。

ヒカリ!!!!

ずきんの女の子達に思い出を見せられるまで、迷わず仕事に向かっていた自分が許せない!

「余裕がない自分を言い訳に、全てを忘れそうになっていたんだ・・・。
僕は・・・。」

「僕は、ヒカリと約束したんだ!」

足を止め、方向転換しようと思ったそのとき、目の前の景色が白く光り、僕は思わず目を閉じてしまう。


「うぅ・・・。」

「ここは・・・。」

僕はまた走り出した。まっすぐ、はやく、はやく。

見つけた!!!





「ヒカリ!!・・・。ごめん、遅くなった・・・。」

「あ〜、寒かった。」

「・・・。」

「はい!」

渡された缶コーヒーから生温かい熱が伝わる。
ヒカリ、ずっと持っててくれたのかな…。

「んふふ、来てくれてありがとう。」

(終)






石垣は心臓に毛が生えました。
こんなにむずむずする話を書くのは最初で最後です。

次は西木くんです!

「あなたが落としたのは、」ep.3 秋

10月もあとわずかですね。明日はハローウィン♪
そして、前回の中村さんが告知してくれましたが、いよいよ明大祭が始まります。
宮本ゼミ5期生&6期生合同企画も是非是非よろしくお願いします!
第131回明大祭

はい、ちゃっかり宣伝もしたところで、本題のリレー小説に行きたいと思います。今回は遠藤が担当させて頂きます。さてさて、どんなエピソードになるのでしょうか?!
若干不安ながらも…
それではスタートです!!




ハァ、ハァ
そろそろあるはずなんだけどなあ…

気づけばいつの間にか別の場所に来ていた僕は、自分がいまどこにいるのか把握できなかった。
通りがかりの人に最寄りの駅を聞き、教えてもらったとおりの方向に走っているつもりなのだが一向に見当たらない。そう思った瞬間、目の前の横断歩道の先に駅舎らしきものが見えた。信号の緑色のライトが点滅し始めている。一秒でも無駄にしたくない僕は、息切れしながらも更に加速する。信号が赤へと変わる。ぎりぎりセーフ。

ホッとした次の瞬間だった。

ズルッ、ドテッ

雪で濡れて滑りやすくなっていたのか、勢い余って転んでしまった。すぐに起上ろうとしたが、アイタタタ。腰を思いっきり打ってしまった。ああ情けない。


「大丈夫?雪が降っているのにそんなに慌てて走るからだよ。」

なんだか聞いたことのある声だ。顔をあげるとそこには見覚えのある女の子?! ずり落ちた眼鏡をかけなおしてみると目の前にはさっきの青ずきんの子だ?!しかし、今は緑色???のずきんを被っている。

「えーっと。(ゴホン)あなたが落としたのは、こちらの赤のペンライトかな?それともこちらの緑のペンライトかな?」

今度は両手に二色のペンライトを持っている。

「もう、何度言ったら分かるのかなァ。僕はペンライトも落としてなんかいないよ。とにかく本当に急いでるから、悪いけど君にかまっていられないんだ。じゃあ、行く・・・」

「それではこちらの、、、」

カチッ

赤の光と緑の光が混ざって黄色い眩い光となり目が眩んだ瞬間、

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ」

ドテッ

ん、クサッ!!
なんだろう?この臭いは・・・

でも懐かしい感じがする。

ふと顔をあげると、そこはイチョウ並木だった。あれ、さっきまで雪が降っていたはずが、辺りはすっかり黄色い景色へと変わっている。

そして臭いの正体は...落ちている銀杏だった。


ここって、よくヒカリとデートで来た場所じゃないか?久しぶりだなあ。最後に来たのはいつだろう?去年だったか、いや一昨年だったか?まるで昨日のことのようだが・・・

毎日追われた生活をしているからか月日があっという間に過ぎていく。

そういえば学生の頃はあちこち行ったなぁ。いろんなところに足を運んでは季節を感じて時間を過ごしていたのに、いつから僕はこんなに余裕のない生活を送るようになってしまったのだろうか?

そういえば、ヒカリに告白したのも学校の校門横にあった大きなイチョウの木の下だった。
後夜祭のイベントで皆で色の違うペンライトを持ってダンスを踊って...偶然ヒカリとペアになって、それで彼女を好きになったんだよな。その時、確か彼女は赤のライトで僕は緑のライトを持っていたんだ!

あれ?向こうで手を振っているのはヒカリ…??

近づこうとすると笑いながら逃げていく。

「おい、ヒカリ! 待ってくれよぉー。」

そしてヒカリは急に立ち止まって振り返りペンライトを差し出した。

カチッ

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ」

ドテッ
アイタタタ・・・
またもや腰があああ

「んふっ、おかえりなさい。思い出せたかな?では改めまして、もう一度お尋ねします。あなたが落としたのは、こちらの赤のペンライトですか? それともこちらの緑のペンライトですか?」

女の子はまたもや首を傾けてこちらをじっと見ながら僕の答えを待っている。
 「もう何度も言うけど、僕はカメラも花火もペンライトも落としていないんだよ。」

カチカチカチッ!! 

「さすがヒカル!三度目も正直だったあなたには、どっちのペンライトもあげましょう。さあ、どうぞ!」

「もう、だからさあ…」

カ・チッ

あれ?またいなくなっちゃったよ。


二つのペンライトを残して、またもや緑ずきんの女の子は消えていた。

気が付くと僕は駅前に立っていた。
いつの間に駅にたどり着いていたのだろうか。そしてあのずきんの女の子はどうして僕の前に何度も現れるのか?謎は深まるばかりだ。

しかし、思い出がよみがえるにつれてヒカリが恋しくなった。
あいつ、最近どうしているのかな...

ハッ、ここで浸っている場合ではなかった。とにかく、今は目的地に急がなければいけない。

僕は再び走り始めた。

(最終回に続く)



初体験のリレー小説、ほんと難しかったです。今までのお題の中で一番ハードル高かった気が…・

果たしてヒカルはヒカリちゃんに会えるのかな?と気になりつつ、、、
第4回の石垣華ちゃんへバトンタッチ。次回はいよいよ最終回です。
華ちゃん、よろしくお願いしま~す。

「あなたが落としたのは、」ep.2 夏

こんにちは!リレー小説って難しい!
最近泣ける映画マラソンもどきをして号泣しまくっていた中村です。

もうすぐ明大祭!ということでちょっと宣伝。

~~
11月1、2日に明大祭が行われるのですが、
そこで我が国際日本学部、宮本大人ゼミカフェをします♪
その名も
「喫茶 時をかけるゆとり~90年代で待ってる~」です!!

90年代から2000年代にヒットしたものたち(テレビやら漫画やらゲームやら)の思い出に浸れるような、私達くらいの世代が「うわ~懐かしい!」となれるようなものにあふれたカフェにできたらなと思っています。


場所は第三校舎、4階の裏側…! 45番教室です!
ちょっとわかりづらいかもですが、ぜひぜひお越しくださいませ。
ゼミ生も、様々な衣装でお待ちしております(*'▽')!



明大祭ホームページはこちら!【PC版】【スマホ版】←クリックして別ウィンドウで開きます

~~

では、リレー小説の方、始めていきたいと思います(*'▽'*)



信号を渡り終え、行ってしまった女の子のことを考えながら再び目的地へと急ごうとする。

「んん?」

なんだかさっき走っていた道と違う…?
あれ、僕はこんな道を走っていたっけ…?

まあいいや、ランドマークタワーがあそこにあるから、進むべき道はこっち側だろうな。

夜空から雪がちらちら降っていて、冷たい風がほほに当たる。
白い息を吐きながら、僕はまた走り出した。

すると、

ドンッ

「わわっ!!また…!」
僕にぶつかったその女の子は、青いずきんをかぶっていた。
今度はメガネが落ちてしまった。

「ん?!青ずきん…?さっきの子??」

んふっ。ごめんごめん。
メガネ落ちちゃったね。はいっ。」

黒目がちなその少女は僕にメガネをかけさせると得意げにこう言った。

「えーっと。(ゴホン)
 あなたが落としたのは、こちらの青の花火かな?
 それともこちらの緑の花火かな?」
両手に2つの色の手持ち花火を持っている…

「ええっ、またか!いい大人が花火なんて持ち歩かないよ!
それより僕は急いでるんだ!ごめんね、そこ通らせ」
「それではこちらの、、、」

バシュ!
手持ち花火が美しい水色の火を噴いた。

またも眩い閃光に目が眩む。

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁあああっ」

ザッパーン…
ザザー


ん?波の音がする。
ここは…

海だ!

夜の海。砂浜。隣に立っているのは…え?
高校生くらいの女の子だ。
ちょっと離れて、向こうを向いている。
うしろ姿しか見えないが、女の子は少し上ずった声で話し出した。

「ここ、花火が良く見える穴場なんだあ。
こないだ見つけたんだよ~、すごいでしょ!
…誰にも教えないでよ?
せ、、せっかく穴場なのに、余計に人が増えんのやだしっ!」

これはいったい何なんだ…?

「ねぇ、君は一体…」
隣に立ってあっちを向いている女の子に近づこうと一歩踏み出したところ、


「わわっ!!」

またもメガネがない!
足元にあった大きめの石に気づかずつまずいて体が傾く

「危ないっ!!」

ドサッ

…僕はその女の子の方に倒れこんでしまった!!

うわわわ!ごめん!ごめんね!
違うんだ、これは、そのつまづいちゃって…ん?」

その時、
僕の裸眼の視力でもとらえられる程、彼女の顔を間近で見て、
はっきりと認識した。

「って…君は、ヒカリ!?

その時、

ヒュルルルル…

ド――――――――――ン!!!


夜空に打ちあがった花火のまぶしい光にからだが包まれた。

「うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ」

ドテッ。

地面におしりを打ち付け、意識が戻る。

「いっててて…。二回目だよ二回目!君は何なんだよもう!」

「んふふっ、おかえりなさい。思い出せたかな?
 では改めまして、もう一度お尋ねします。
 あなたが落としたのは、こちらの青の花火ですか?
 それともこちらの緑の花火ですか?」

首をかしげて目をぱちくりさせている女の子の顔は真剣そのものだ。

「だから!僕は花火なんか落としてないって!」
パンッ
あったり~!ヒカル、えらいえらい。
正直に言ってくれたあなたには、どっちの花火もあげちゃいます。
さあ、受け取って!」

「え、あ、ちょっと!ってあれ?いなくなっちゃった。」

僕に花火を渡して、青ずきんは消えていた。

「さっきの海にいた女の子はヒカリだったよな…」

つい、ポツリとつぶやく。
ヒカリは、今付き合っている彼女だ。僕の名前はヒカルなので、ヒカリとヒカルで光コンビのカップルだね、なんて付き合いたての高校時代にはよく言われていた。
最近はデートなんて全然できていない。僕の仕事はいまとても忙しいのだから仕方ないけれど…。

そういえば高校の夏、ヒカリが花火の穴場スポットに連れて行ってくれたことがあったような…もうあれから何年もたつし、まだあの時は付き合ってもいなかったし、すっかり忘れていた。僕が石につまずいて、ヒカリの方に倒れこんじゃったこともあったな…。
あ、さっき「入学式がはじまる」とか言ってぼくの腕を引っ張ったのもきっとヒカリだ!



なんだかたまらなく懐かしくなった。
僕、ヒカリとの思い出、忘れかけているのかもしれない…


っと!!
いまは急がなきゃいけないんだった!
ん?あれ?
またいる場所が変わってる。
何でずきんの女の子に会うと、ヒカリとの思い出を見せられ、別の場所に飛ばされるんだ??

とりあえずまた目星をつけて目的地まで急ごう。

さっきよりも雪が積もってきて、少し足場の悪くなった道を、僕はまた走り出した。





(第3回に続く)


恋愛系の要素難し…
ブログテーマ「付き合ってみた」でがっつり恋愛系を書かなかった自分にはなかなかきつい部分もありました…笑
個人的には結末をなんとなく予想しつつ書いているのですが、どうなるのでしょうか!
ヒカル君が主人公、ヒカリちゃんが、その彼女&回想シーンの女の子なのでパッと見間違えてしまいそうですがどうかお間違いなきよう!(>o<)
メガネで真面目で黒髪で一人称僕な男子って良いですね…!


お次はあやの!よろしくお願いします(●^o^●)

「あなたが落としたのは、」ep.1 春

こんにちは!ブドウの美味しい季節ですね。
食欲の秋、絶賛満喫中の岩谷です。
それではリレー小説、第3話 ep.1 春、早速ですが始めさせていただきます。




「っと!危ない!」

急に足を止めた拍子に、かけていたメガネがずり落ちた。
慌てて掛け直して目の前に飛び込んできた赤い物体を捉え直す。

 こども?ずきん?赤ずきん??

と思った瞬間、赤ずきんの中から見知らぬ女の子の顔が現れた。
「んふっ、びっくりした?」(にっこり)

まるで僕のことを知っているかのような顔で話しかけてきた。
 
「ヒカル、」
 えっ、、、!!

「そんなに急ぐと滑って転ぶよ。ほら、雪も積もり始めて」
「えっ、ちょ、ちょっと!キミ誰!?誰かは知らないけどなんで僕の名前知ってるの?!僕に何か用?!あっ、いや、時間がない。と、とにかく今はキミの相手をしている時間がないんだ。困るよ。いい加減、通してくれないかなっ。」

自分でも驚くほどの速さで捲し立て、歩き出そうとした途端、
 
「んふっ。まぁまぁ、落ち着きなさいって。」
僕の焦りようなんてお構いなしに、その子は持っているカゴの中をしきりにゴソゴソ漁っている。

 え、何だよ。なに探してんだよ。時間ないんだって!
 
「ちょっとキミ、ごめんね。僕、本当に急いでるんだ。
 お母さんとはぐれちゃったなら来た道を戻ればいいよ!一緒に探してあげられなくてごめんね。もう行か」
あった!!
 えーっと。(ゴホン)
 あなたが落としたのは、こちらの青のカメラかな?
 それともこちらの赤のカメラかな?」

両手に2つのカメラを乗せた迷子と思しき女の子が、急に真面目な顔で尋ねてきた。
 
「え、、、?なんて?落とした?カメラ?僕カメラなんて落としてな」
「それではこちらの、、、」

カシャッ
 
眩い閃光に目が眩んだ瞬間、


うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ


僕はなにかに引っ張られながら、意識が飛んだ。


グイッ

「ほら、こっちだって!ヒカル、ぼけっとしないで!」
よろめきながら、勢いよく引かれた痛みで意識が戻った。
「え、、、?どこだよここ、、、?」

てかこいつ、、、

僕の腕を勢いよく引っ張りながらずんずん歩みを進める彼女の長い髪が風に揺れる。
 
「ねえ!ちゃんと歩いてってば!」
 
あれ、、この声、、、どこかで聞いたことあるような、、、どんっ!
 
「あっ、す、すいません!」
道行く人の流れに逆らって進んで行く彼女の顔は僕からは見えない。

ちょ、ちょっと待って!一体どこに連れていくつもりなんだ?」
「は?まだ寝ぼけてるの?入学式でしょ!」
「にゅうがくしきぃ!?ははっ、冗談言うなよ!
 今何月だと思ってるんだよ。っていうか僕、急いでるんだってば!!」

ってぇえっ!?

今になって気がついた。雪が止んでいる。雪が止んでいるどころか空が明るい。
白く霞んだ雲が空を泳いでいる。ぽかぽか陽気でなんだか心地が良い。

 って和んでる場合じゃない!
 
「ねえ、ちょっとキミ!今何時?!」
「えっ?あと10分で始まるって言ってんでしょ!13時から開始!ほら早く!」

「いちじ?!?! さっきまで19時に間に合うように走ってたんだぞ?!
 それに入学式って何だよ!時間も季節もおかしくなってるって、、、」
   
 一体、なにがどうなってるんだ?!

わけのわからない状況に混乱しながら、ましてや全速力で思考回路もままならないまま、なすすべもなく僕は彼女の後ろを追いかけた。

「ふう〜!間に合った!んふっ、やっぱり私の方がはや〜い!意外と余裕だったね〜!」
くるっと向きを変え、僕に向かって両手を振る彼女と初めて向き合った。

のだが、顔がよく見えない。
「んっ?あっ!めっ、メガネ!メガネがない!あれっ」
顔に手を当ててもポケットに手を突っ込んでもしゃがみこんで辺りを手探りしてもメガネはいっこうに見つからない。
 
「あはは、ヒカル何してんの!ってわぁっ!ヒカルの頭の上!
 その桜、すっごく綺麗!満開だね!そのままそこにいて!記念に写真、撮ってあげる!」
 
「えっ?なにっ?さくら、、、っ?
 
カシャッ

眩い閃光に目が眩んだ瞬間、

うわぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁああぁああっ





ドテッ。

冷たいコンクリートに両膝を打ち付けられた痛みで、再び意識が戻った。

「いてて、なんだよもう!って、ああっ!
落ちてくる雪の先には見覚えのある顔が見える。

「んふっ、おかえりなさい。思い出せたかな?
 では改めまして、もう一度お尋ねします。
 あなたが落としたのは、こちらの青のカメラですか?
 それともこちらの赤のカメラですか?」

僕の答えを待つかのように女の子は首を傾げてこちらを見上げている。
 
「、、、僕は何も落としてない。落としたんじゃなくて、」
パンっ
だ〜いせいか〜い!やっぱりヒカルは正直者だね。
 それじゃあ、正直者のあなたには青のカメラと赤のカメラの両方をあげましょう。
 はい、どーぞっ!」
 
「えっ、あっ、ありがと。っじゃなくて!だ、だから僕はっ」

パァーーーーーーン、キキィッ
 
バカヤロウ!赤信号だろ!危ねえだろうがっ!!」

ハッと気づいた時、僕は横断歩道の真ん中で膝をついていた。
青いカメラと赤いカメラが道路に転がっている。
再びクラクションを鳴らされ、その二つを抱え上げ、咄嗟に走り出す。
信号は赤から青へと切り替わった。


    あれっ、、、どこ行っちゃったんだよ、、、








(第2回に続く)



はい、ここでバトンを渡します。
はてさて赤ずきんをかぶった女の子はどこへ行ってしまったのでしょうか。
ボクっ娘ならぬ僕っこヒカルくんはどうしてあんなにも急いでいるのでしょうか。
全4回、後の展開は私にもわかりません!(笑)
さや、次よろしく〜。^^

「以上、東京からお送りしました。」~それぞれの年明け編~

こんにちは!
第2話の最終回はわたくし菅野が担当いたします。
いやあ、難しいですねこの企画は。
ただ、みんなの想像力と文章力、若干人のこと考えながら話をすすめないといけないところから生まれるチームワークなどは、まさに宮本ゼミらしい企画でもあるかと!


それではどうぞ!

――――――――――――――――――――







「以上、東京からお送りしました。」

「はい、ありがとうございました。

続いてのコーナーはこちらッ!お正月太ってしまったアナタ、大注目で~す」


年末年始、テレビの情報番組では、重要なニュースに限ってないがしろにされる。
年末はどさくさにまぎれようと結婚ラッシュを迎える芸能界、デパートの高額福袋、年が明けても芸能人の誰がハワイに着いたとか、紅白歌合戦の裏側、とか。
まあ年の終わりと始まりに、わざわざ暗いニュースを聞きたいなんて人もいないだろう。

年末におきた、有名飲料メーカーの薬物混入事件も例外でなかった。
いや、薬物、かはまだわからない。

事件は12月26日、飲料メーカーの会社員男性が倒れた状態で見つかったことで発覚。
倒れる直前に飲んだと思われる缶コーヒーの中身を調べると、睡眠導入剤と同じ成分が検出されたという。
薬物の正体も、混入過程も分からず、その上コーヒーが未発売の試供品であることから不明な点が多すぎて、年末年始のニュースでもあまり取り上げられなかった。
倒れた会社員の命に別状はなく、即日退院で済んだ。

いやあ、こんな時期にこんな事件に巻き込まれたら、たまったもんじゃないだろうな。
ニュースによれば飲料メーカーの社屋は隣の区らしいから、自分もちょっと危なかったかもしれない。
いやいや、ただでさえ冴えないこの俺が、さらに不運な立場にさらされることもないか。




******



私は、首元のちいさなネックレスを無意識にさわりながらぼーっとテレビを見ていた。

あの日からお守りのようにつけている華奢なデザインのネックレスはクリスマスの翌朝、レンがわざわざ家まで来て母に預けていったものだ。
クリスマスにデートをしていたのだから、直接渡せばいいものを、初めてこんなに大人っぽいプレゼントを買ってしまい、緊張のあまり渡すタイミングを逃したらしい。
家族ぐるみの付き合いだから、母も気軽に受け取って、朝早くからありがとう、とお礼に渡したのがあのコーヒーだった。

結局レンはコーヒーを飲んでいなかった。
親しい人にもらったとはいえ、自分の好みに対するこだわりは捨てきれなかったようだ。
コーヒーはそのあとで、捨てた。不気味なものが周りにあるのは気持ちよくない。
父も「普通」といっていたのだから、味にも期待できないだろう。


テレビでは、クリスマスにデートしていた場所で打ち上げられていた花火の様子が放送されていた。
あの日施設側がサプライズで打ち上げた花火を見逃したことは、後になって気づいた。
コーヒーをもらう前に周りから人がいなくなったのは、皆それを見に行っていたからだった。
今思えばそんなことまで怪しいと感じてしまった自分の危機予測センサーの強さに少し笑ってしまう。


携帯の着信音が鳴った。
彼から次のデートの誘いだった。



******



ネコでいるのが、嫌になることがたまにある。

元飼い猫は格上、というネコ界の特権を最大限に生かし、俺はこの街の帝王となった。
なにもかも手に入るのに、なにか満たされない。
自分を捨てた人間をこらしめたくなって、子分たちに毒薬をつくらせて、人間のからだを乗っ取っとろうとしたのはこれで4回目。

今回も失敗した。
人生うまくいってる人間ほど乗っ取るのは難しい。
そして、失敗するときはだいたいいつも、思いもよらないやつに乗り移ってしまう。
というのも、万が一シンクロ率が低い事態に備えて、子分たちが余分に同一剤を仕込んでくれているからだ。
今回も子分は全部で3つの缶に同一剤を用意していた。

狙っていた人間は予定通り缶を手にしたが、それを違う男に渡してしまった。
自分の「容器」にはふさわしくない、冴えないやつだったから、シンクロ率が低かったのは幸いした。

予備のうちの一本は再び狙っていた男のもとへ渡ったが結局その男は飲まなかった。
人生うまくいってるやつは運命さえも操ることができるのか。

残り一本、途中まで同一化できた別の男もまた「容器」にはふさわしくなかった。
だから、もう一度着実に計画を実行したいという気持ちが強かったのか、結局その男に同一化することもなかった。

自分を捨てた、憎むべき人間め。やつらが「年末」と呼んでいるこの時期はとくにうるさい。いい大人のくせに、年の最後の日だけ盛り上がりやがって。
いつも子分がエサをもらってくる商店街のおばちゃんも、この時期はしばらく居なくなる。
そんなにネコが好きなら、そんなにネコを可愛がりたいなら、家で飼ってくれればいいのに。
エサをくれるのはありがたいが、中途半端に甘やかすのもやめてほしい。
そうやって考えているうちに、所詮自分はネコなのだ、人間がいなければ何もできないのだと痛感する。


本当は気づいているのだ。人間に報復しようとしても何も変わらないのだと。
自分はただもう一度、人間に愛されたいのだと。



******



何度も仕事を辞めようと思っている。

今度はついに、会社に殺されそうになった。
まさか、自分の会社の商品に薬物が入っていて、まさか、それを自分が飲んでしまうとは。
その時のことはよく覚えていないが、コーヒーを飲んだあと、とにかく感じたことのない恐怖を感じたのは確かだった。
原因となった薬物の成分はまだ分析中らしいが、そこまで強力なものではなかったことは確からしい。


十年間経理部にいたが、最後の4年は辛くて仕方がなかった。同じ毎日のくりかえし。
異動でも、転職でもいい。とにかく違うことがしたかった。

そんな折、空きがでた営業への異動が急に決定したのが去年の春。
あれだけ違う仕事がしたかったのに、自分は人前で話すのが苦手だということを忘れていた。残業も多く、またしても苦痛の毎日だった。

クリスマスのあの夜、モニター調査の仕事で最後の女性に声をかけた時も、上手く話せず怪訝な表情を浮かべられた。
もし渡したコーヒーにも薬物が入っていたら、完全に自分が犯人だと思われていただろう。


テレビでは、お正月の特番もネタが尽きてきたのだろう、つまらないバラエティ番組がほとんどだったが、外国人が日本をヒッチハイクして旅する企画はまあまあ面白かった。

「大人は仕事しなければいけない」って、誰が決めたのか。
今年こそ仕事なんか辞めて、こうやって自由に過ごしたい。



******



冴えないやつでも、生きるのは楽しい。

クリスマスの日以来、どう考えても気まずくて、ヌクモトのいるコンビニには行けなかった。
しかし、年も変わって仕事初めのこの日、やっぱりヌクモトのことが気になって、帰りがけに立ち寄ってみることにした。

店内にヌクモトらしき人はいなかった。
入ったからには何か買おうと粒ガムを手に取りレジへ向かう。

「いらっしゃいませー」

「あ…のうー ヌクモトさんって今いますか?」

それは意図せず発したことばだった。
そしてレジのおばちゃんの

「ん?ヌクモトさん?ちょっと知らないわね…私パートで週1回しか来ないから…まだ会ったことない方かもね」

という返事を聞いて初めて自分の失敗に気づいた。
ヌクモトなんて名前、自分以外の誰も知るはずがない。

自分の冴えなさに改めて落ち込む。

なんともいえぬ恥ずかしさと寂しさを感じながらコンビニを出た。

ヌクモトはまた戻ってくるのだろうか。
再び出会ったときの気まずさよりも、戻ってきてほしいと思ってしまう気持ちの方が強い自分がいた。

大人になってから、こういう小さな出会いを大切にするようになった気がする。そうやって生きることを愉しめるようになった。
クリスマスのあの夜、自分にとっては何の変哲もない平日の夜が、ヌクモトによって少しだけ彩られたことには感謝したい。



******



店内はチョコレートばかりで嫌になった。
きっと明日から、包装紙を変えてホワイトデー用の売り物にするのだろう。
いや、俺だって同じ部署の女の子から5つは貰った。
買おうと思っていた週刊誌を手に取りカバンの底の財布を探しながらレジへ向かう。

「温めますか?」

と聞き覚えのある声がした。



<オワリ!>



―――――――――――――――――――――

はい、ぎゅぎゅっと、おさえ込みました!笑
みんなの思っていたような最終回じゃなかったかもですが、こんなんでご勘弁を!

あと、忘れられかけていた全体のルール、「大人」のキーワードもねじ込んでおります。笑


次回からは第3話がはじまります。
どんなお話になるのか楽しみですね!
岩谷さんよろしくー!